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[完結済]【呪い系ホラー】こはるちゃん、いっしょに。  作者: てっぺーさま
第一章 心霊現象

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拒絶

【闇堕ち少女、怨霊(おんりょう)と化す——】

 呼び出し音がしばらく鳴ってから、相手が応答した。

「……はい、もしもし?」

 寝起きのような気だるい声が電話越しに聞こえてきた。午前十時だったが、岩国はまだ寝ていたらしい。

 奈央は早朝の電話を詫びてから、心霊現象が再び起きたことを伝えた。電話越しにも岩国の動揺がひしひしと伝わってきた。

「どうやら、思った以上に厄介な相手らしい……」

 岩国の声は怯えているように震えていた。

 動揺している相手に再び頼みごとをするのは気が引けたが、今は躊躇(ちゅうちょ)している場合ではなかった。奈央はおそるおそる口を開いた。

「……また結界を張ってもらうことって、できませんか?」

「いいけど、これじゃイタチごっこだよ。またすぐに元に戻るに決まってる」

「それでもいいです。少しでも収まれば」

 岩国が押し黙り、しばし気まずい沈黙が流れた。

「……岩国さん?」

「だいじょうぶ、聞いてるよ」

「お願い……できませんか?」

 まさに、藁にもすがるような思いだった。

 やがて、岩国のきつい口調が鼓膜を震わせる。

「おれさ、自分で言うのもなんだけど、そこらの霊能者よりも力は上だと思ってる。そんなおれが張った結界がだよ、たった一週間で効力を失ったんだ。これって、よっぽどのことなんだ」

 その言葉に、奈央の気分は沈み込んでいく。

「結界を張ったことで、その霊は相当怒ってるはず。また結界を張っても、今度は三日ももたないかもしれない。それに、おれ自身も無事でいられるか……」

「そんな……」

 すると、岩国が咎めるような口調で切り込んできた。

「本当はわかってるんだろ? 誰に恨まれてるのか」

「え……」

 奈央は言葉を失ってしまう。

「あのときは友だちがいたから深く追及しなかったけど、君の顔を見てすぐにわかったよ。君は特定の誰かを恐れている。だろ?」

「それは……」

「嘘をついても無駄だよ。おれは人の嘘を簡単に見抜く」

 その有無を言わさぬ強い言葉に、奈央は何も言えなくなってしまう。

 黙っていると、岩国はさらに言葉を重ねる。

「いいかい。今君がやるべきことは一つだ。心から悔い改めて、謝罪すること。それが相手に伝われば、今起こっていることは収まるかもしれない」

 協力が得られないことがわかり、奈央は深く失望した。その不満を押し殺しながら、力なく言葉を返した。

「……わかりました。少し考えてみます」

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