退学
【発狂までのカウントダウン——】
奈央は大学を自主退学した。これ以上大学に顔を出すことなどできなかったからだ。
退学したことは両親には黙っていた。仕送りを止められたくなかったからだ。そのため、退学届の保護者記入欄は知人に代筆してもらった。
しかし、大学から実家に連絡が入ったのだろう。退学後すぐに仕送りが止まった。
実家に連絡を入れると、電話に出た母にいきなり罵声を浴びせられた。
「あんたのせいで、どれだけ困ってるかわかってんの!」
どうやら、両親が恐れていた事態が現実になったらしい。娘の醜聞は町中に広まり、両親が営む酒屋の客足はぱたりと途絶えたという。経営は行き詰まり、店を畳むことも検討しているそうだ。
母が苛立ち紛れに叫ぶ。
「うちみたいな小さな店は、地元の人に嫌われたら終わりなのよ!」
だが、奈央も黙っていられなかった。
「あんなの配るなんて犯罪だよ! 名誉毀損で訴えればいいんだ!」
「あんた、何言ってんの! そもそも、あんたが悪いことしたんでしょうがぁ!」
母の金切り声に、奈央は思わずスマホを耳から離した。
「でも、あれは絶対に犯罪だよ!」
「じゃあ、あんたがやったことは犯罪じゃないって言うの!」
「うっ、それは……」
核心を突かれ、奈央は返事に窮した。男友だちに同級生をレイプさせ、恐喝し、最後は自殺にまで追い込んだ。自分の行為は、どう考えても犯罪そのものだった。
罵りの言葉はえんえんと続いたが、この状況では仕送りの再開など望めないと悟り、奈央は黙ったまま一方的に通話を切った。
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