墓参り
【復讐は姉の怨念とともに——】
隣室の監視カメラの映像から、本田奈央が旅行の準備をしているのがわかった。
恭弥はスマホ画面に映る彼女の表情をじっと見つめる。その重苦しい表情から、楽しい旅ではないのは明らかだ。状況から考えると、実家への帰省が濃厚だ。佐藤演じる偽霊能者に諭されたことで、姉への謝罪を決意したのかもしれない。
さっそく恭弥も次の作戦に備えて荷造りを始めた。
「一人のほうが動きやすいから、マコは留守番を頼む」
「うん、わかった。気をつけてね」
恭弥は足元に置かれた大型封筒の山に目を向けた。それらはすでに封がされ、宛名も記載されている。
「マコ、これも頼む」
恭弥は封筒を指差して言った。
「わかった。全部、速達でいいんだよね?」
「そう。あと、もうこの部屋に用はないから、引っ越しの準備も進めておいて」
* * *
視線の先では、本田奈央が姉の墓石の前に立っていた。憔悴し切った顔で、墓石に向かって何やらつぶやいている。おそらく、姉への謝罪の言葉だろう。だが、心から謝罪しているようには見えなかった。仕方なく謝罪しているという態度が全身からにじみ出ていた。そんな上部だけの謝罪で、姉への仕打ちが許されるとでも思っているのだろうか——。
木陰から様子をうかがっていた恭弥は、そんな彼女の姿を見ているうちに、抑えきれぬ憎悪が湧き上がってきた。
恭弥は握った拳の側面を、身を隠していた樹木に打ちつけた。
「本田奈央、本当の地獄はこれからだ」
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