幕間
【復讐は姉の怨念とともに——】
小島の事件は、ほんの小さな記事で報じられただけだった。暴力事件などは日常茶飯事だ。殺人事件でさえ、特別な状況でもなければ大きく取り上げられることは少ない。小島の件は、誰の関心も引かずに忘れ去られることだろう。
恭弥は机の椅子に座ったまま警棒を強く振った。振り下ろした瞬間、警棒が三倍ほどに伸びた。
「ん?」
先端についたシミが気になり手でこすってみると、それは乾いた血の跡だった。ティッシュで警棒を拭いていると、マコが心配そうに声をかけてきた。
「恭弥君、次も一人でだいじょうぶ?」
「だいじょうぶだよ。小島のときもうまくいったし」
それでも、マコは不安な面持ちのままだ。
確かに、彼女が心配するのも無理はなかった。恭弥はこれまで暴力とは無縁の生活を送ってきた。身長は一七〇センチもなく、どちらかというと線も細い。そんな自分が武闘派の男を襲おうというのだから、マコが不安がるのも当然だった。
小島に反撃されかけたことはマコには黙っていた。言えば不安をさらに煽るだけだからだ。また、小島がエレベーターの窓ガラスに映った何かに驚いたことも伝えていなかった。余計なことを言って無用な恐怖を与える必要はない。
「何か手伝えることない?」
「今回も一人でだいじょうぶだよ。マコの手が必要になったら、そのときはちゃんと言うから」
「わかった。でも、気をつけてね」
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