募る憎悪
「カナ、今日は時間あるよね?」
友人の綾から誘いの声がかかった。
華菜子は相手の気を悪くさせないよう、精いっぱい申し訳なさそうな表情を作って答えた。
「ごめん、今日も家の用事があって……」
「そ、そっか……」
「本当にごめん!」
華菜子は両手を合わせて謝罪する。
「ううん、平気。また今度ね」
綾は悲しげな笑みを残して去っていった。
二日続けて誘いを断ったことで、綾との関係に亀裂が入ったように感じられた。こちらが意図的に避けてると勘違いされないことを願うばかりだ。
しかし、今は友人との関係を気にする余裕はなかった。今は急いで金を貯めることを優先すべきだった。あの動画をネットにさらされたらすべて終わってしまう。それに、今月中に目標額を貯められなければ、あんな場所でいやな思いまでして働き始めた意味がなくなってしまう。あの小汚い店長に身体を売ってまでして手に入れた仕事なのだ。途中で投げ出すわけにはいかない。友人への埋め合わせは、要求された金を払って本田奈央との関係を断ち切ってからすればいい。
華菜子は自転車置き場へ向かいながら憤りを覚えた。今は放課後に友人と過ごすという高校生らしい生活さえ送れない。それもこれも、すべて本田奈央が原因なのだ。
「あの女、絶対に許さない」