余興の終わり
隣のクラスで起きた朝の騒動は、すぐに奈央の耳にも届いてきた。
教師が介入したため、吉野リサがこれ以上問題を起こす可能性は低い。退学だけは彼女も避けたいはずだ。
奈央にとっては面白くない展開だったが、原口華菜子はただ黙っていじめられるような生徒ではない。模範的な優等生で、男女問わず人望も厚い。それを考えれば、吉野リサを使った策略では、この程度が限界だったのだろう。
だが、今回の件は単なる余興に過ぎない。本番はこれからだ。奈央はさっそく本命の計画に移ることにした。
校門を出たところで、奈央は電話をかけた。
「もしもし、カズマ? 例の件だけど——」
電話の相手は、奈央の連絡を待ちわびていたようだ。荒い鼻息が電話越しにも伝わってくる。良い兆候だ。
「——そうね、最低でも二人は連れてきて。じゃあ、また連絡する」
通話を切ると、奈央は身を震わせた。計画が本格的に動き出したことで、興奮で自然と胸が高なっていく。雅を奪われた心の痛みも、この計画が成功すれば綺麗さっぱり消え失せるだろう。
「見てなさい。わたしが味わった苦しみを、何倍にもして返してやるんだから」