ゲーム日和。
チャー、チャラララ♪♪ チャー、チャラララ♪♪ チャラ、チャララ、チャチャラ、チャチャラチャー♪♪
「……うるせえ」
ゴンッと腕を振って乱暴に消されるアラームは、スヌーズ表記。
気に入っているはずの歌が、朝のアラームになるととんでもなく不快だ。
ゴソゴソ、ゴソゴソ。布団にくるまり、眠り続ける。深く深く、もっと深く眠りたい。何も考えず眠れるだけ、眠る。
ーー眠る時だけは、何も考えなくて済む。
隣人の歌声がする。……朝からうるさい。
早起きババアかよと思うが、普通に年若い女だ。
聞こえる歌のリズムは、妙に跳ねていた。たんっ、た、たたんっ。飛び跳ねてるのか知らないが、とにかく歌うのをやめろ。ベランダで大声で歌ってんじゃねーよと、布団の中で耳を塞ぐ。
そして、しばらくして静まった。気が落ち着いた。
やっと、眠れる……。そのままゆっくりと息を吸い、本格的な眠りの呼吸に入ろうとした時。
重なるように、チャー、チャラララ♪♪ チャ、チャー、チャラララララララ♪♪♪
……くそ。
布団を足で蹴り上げて、ベッドサイドのスマホを取る。
表示は、6時45分。
スクリーン画面のその文字が憎い。そもそもアラームを6時15分に、通常セットしているいつもの自分が憎い。
「まだ寝れる……」
が、寝たら確実に遅刻だ。二度寝ほど心地良いもんは、存在しない。今日は朝会があったはずのため、遅刻厳禁だ。
何時間寝たんだ? 昨日は1時に寝た気がする。ゲームのノルマをギリ達成して、そのままベットで寝落ちした。つまり、5時間寝たということだ。
「……はぁ」
とりあえず、アプリゲームにログインしてボーナスを受け取った。あと15日で通算ログイン達成で、石がもらえる。
イベントガチャは、新しいのは出てなかった。最近課金したばかりだが、推しは出ずに爆死したため、何としても引きたかった。300連の石が死んだが、推しが引ければ、その金は無駄にはならない。
お、と。ギルマスからのイベントノルマ要請がある。今日もキツイな。トップ勢がいきり立ちすぎているせいで、ギルマスもギア上げてる。
チケット多用して、ボーナス+課金者専用オートプレイで流すか。3倍速で。でも、日に制限があるせいで、結局は自分でも周回する必要がある。面倒くさいな。
はーっとため息をついて、仰向けにベッドに転がり、天井を見る。
……シャワー浴びるか。
ごちゃごちゃの荷物を足でどかしながら、動かして道を作る。
風呂場の換気扇を回す。
顔もついでに剃ろうと思い立ち、髭剃りを取り、風呂場に入る。
ぬるめの湯で髪を濡らし、リンスインシャンプーで豪快に洗う。そのまま、泡をつけて髭を剃る。身体はボディシャンプーを泡立てた粗布で、ゴシゴシ洗う。
そして、全体の泡を頭から一気に流す。髪を綺麗に洗い流せば、身体のシャンプーもいつのまにか流れている。
髪を洗い、顔を洗い、身体を洗い、と一回一回洗い流すのは、時間の無駄だと考えている。こんなことをするのは、水の節約というよりも、効率的に風呂に入りたかったから。それがいつのまにか習慣付いただけだ。
そのまま、上がって洗面台にタオルがないことに気づいた。ポタポタと雫を垂らしながら、洗濯物からタオルを取る。床に水跡が残って、通り道になっていた。
「…………」
また、ベッドに戻った。
とりあえず、SNSを開く。情報収集も、SNSを見れば関心のあるものの情報は出てくる。同僚の話題についていけるだけの、情報が集められればよかった。
……新作ゲームの発表が、動画サイトであったみたいだな。3年期間が置かれたシリーズが発表されたらしく、大きくガッツポーズする。発売予約しよう。
そのまましばらく関連を見て、時間を潰す。
そして、動画も見る。ゲーム実況者にも推しはいる。会話のうまさとプレイのサクサク感が好きだ。
「おっと……」
朝飯は知らね。プロテインでも飲めば、朝飯になるだろう。プロテインは意外と腹持ちが良く、そもそも朝飯は食わなくても、動ける。足りなくなったら、栄養補助食品でも買って食べれば良い。
ベッド下の収納から、プロテインを取り出す。
低脂肪牛乳200ml、プロテインに付いているスプーン3杯をシェイカーに入れて、ひたすら振る、振る、振る。
均等に混ざったら、テーブルに蓋を置いて、一気飲み。ごくごくごく。
「……はぁっ!」
だん! と叩きつける。
7時52分。時間が足りねえ。
「ちっ!」
スーツを着用して、ネクタイも軽く締めた。
昨日の夜のままのカバンを持って、慌てて家を出る。エレベーターより、階段が早い。自転車置き場まで走った。
下にいる住人を見て、ゴミ出しがあったことを思い出すが、忘れた。ペットボトル回収だったか。燃えるゴミに出せば良いだろ。
すれ違う同階の住人がしょぼしょぼした目を擦りながら、上に登っていく。
だるだるのジャージ、ボサボサの髪。その野暮ったさに、こいつみたくはなりたくねぇと思いながら、自転車を走らせ職場に向かう。
「……うわぁ、暴走自転車野郎じゃん」
かすかに聞こえた声は、無視した。
彼は、怠け者予備軍になっているかもしれません。作者と同類です。
次の話は、この部屋の隣人の隣人のお話になります。
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