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ご飯が好きなら、ご飯を食べよ。眠いなら、しっかり眠るのだ。日々は徒然。多分、情けはどこかに転がってる。  作者: Hours


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お隣さんたちへの好奇心


 お隣の男の人たちは面白い人たちだ。

 一人はスゴく無愛想で。一人はすごい大人な人。第一印象でいえばね?

 でも無愛想なようで、よく知ってみると感情がわかりやすかったり。大人なようで、あわてんぼうだったり。

 人が色んな側面があるのは分かっているけれど、見ていて楽しい。たくさんの人と関わってきたつもりの私でも、あの人たちは読めそうで読めないところがある。

 あの二人は全く対称的で、似ても似つかないように思える。似ているとしたら、他者に積極的に関わり合おうとしないところかもしれない。

 そんな二人は、結構相性が悪そうで((対照的な性格だから?)。挨拶をしているところもみたこともないし、すれ違っても無視していることが多い気がする。


 でも、仲が悪いかと思えば、最近は部屋で一緒にゲームをしていたらしい。スゴく気になる。

 この間は隣人さんの部屋で相談に乗っていたと言っていたし、彼らの間で一体何が?


「……うーん、二人で何してるんだろう」


 お隣さんたちとの私の関係は、ほんとただのお隣さんってだけで、見かけたら挨拶したり、自分だけでは消費しきれないものとかをお裾分けするとか、ただそんな感じの関係なんだけど。

 でも、なんかおとなりさんとしての関係値でいえば、あの二人の関係よりも私と二人それぞれの関係の方が深かったのではとおもうのですが……。

 ちょっと寂しい気持ちがある。いや、ね! 友達ーとか、恋人ーとか名の付くような関係じゃないけどさ! 縁あって隣人になったわけでしょう? 隣人としての仲があるはずだもの。気になってしまうのはしょうがないじゃない。


 で、気になった私は、二人の部屋を通るたびに様子をうかがうようになってしまった。とんだ不審者だ。


 この間、隣人さんのご家族? ――お姉さんなのかな(お母さんにしては服装がスゴく若々しかった)――を見かけたんだけど、その人、何度もインターホンを押して、イライラしてる感じだったので、何かあったのかもしれないと思ってる。

 高いヒールの音がカンカン響いていて、その場で何度も足踏みをしているようだった。声をかけようかと迷ったけど、腕組みをして、スマホをにらんでいる様子が怖かったからやめた。でも、気になったので隣人さんにその話だけは伝えておいた。

 そのときの隣人さんはとても焦った様子で、そして顔色が悪かったのも覚えている。

 美人さんだったので、恋人なのかなとも思った。隣人さんは無愛想だが、見た目はかっこいい人なのだ。でも、恋人にしてはインターホンを何度も押すのも、少しも見かけたことがないのも変だと思った。隣人さんによく見ると似ている気もしたので、多分家族だとは思う。


 まあ、とにかく彼らの間で何かしらの問題が発生しているのは間違いない。


「気になる……」


 ――彼らの間で何があったのかスゴく知りたい!


 いつもなら、それとなーく匂わせて聞いてみると、大人な隣人さんが教えてくれたりするんだけど、話で知りたいって訳じゃなくて、なんていうかー、当事者になりたいというか、相談相手の一人になりたいというか……。疎外感? がある。


「……んんんっ、えっと、この間の件は大丈夫でしたか? もし、よければ相談に乗らせていただきたいです」


 シミュレーションをして、ドアの前をうろちょろする。この、動く前の躊躇する時間が一番つらい。


 ――ガンッッッ!!


「……っ、びっくりした」


「大丈夫ですか!」


 突然扉が開いて、顔をぶつけてしまった。ちょっといたい……。


「いえ、こちらの不注意なので」


 出て来たのは、何やら知らない人だった。この部屋の住人じゃないことだけは確かだった。


「あ、何か用事がありましたか?」


 ……あれ? 声を聞いて気づいた。


 顔を上げてよく見てみると、もう一人のお隣さんだった。スーツを着て、めちゃくちゃ社会人! って感じの装い。普段は、なんていうか、だらしないって言葉の方が似合う服装をしていたので、スーツを着ている姿を見ると別人みたいだ。

 それよりもどうして、この人がここから出てきたのか。互いの家を行き来する仲になってるの!?


「いや、あの……ちょっと、この間の件が気になってしまって。あの後、大丈夫でしたか?」

「……あぁ! 今、話し合いが終わって、ひと段落したところなんです」


 話し合い? 私の知らない間に話がすごく進んでしまっているようだった。……詳しく聞きたい。でも、こうやって首を突っ込むのはよくないかな? どうしよう。


「気になりますか?」


 私がしばらく逡巡していると、大人な隣人さんはやはり察してくれた。



「お邪魔します」


 そこは男の人の一人暮らしって、こんな感じなのかーと思うような部屋だった。私の部屋よりも若干部屋が広いように感じるのは、物が少ないからなのかな? 

 間取りは同じだけど、リビングルームには物置みたいな大きな棚と、ソファとテーブルがあるだけ(それも全部黒い)。

 私の部屋もソファ、ダイニングテーブル、テレビがおいてあって、配置もそこまで違いはない。でも、壁にお気に入りのポスターとかカレンダー、観葉植物(パキラ、モンステラ)を飾っているから、ちょっとさみしい感じがする。カーペットもないし。なんか落ち着かないのは色味が少ないからかも? モノクロなの。


「……なんで、この人がここに?」


 奥の部屋から出てきたのは、部屋の主。憔悴した様子で、明らかに何かあったのが分かる。私はちょっと気まずいなと思いながらも、お邪魔しますと言っておいた。


「この間、お前の母親に遭遇してただろ。心配になって、様子を見に来てくれたらしい」


 お前呼び……? めっちゃ親しくなってる……。


 私は混乱しながら、お話を聞くことにした。


 話によると。先日、私が会った人は、若いお隣さんのお母さんだったみたい。めちゃくちゃ若いな……。

 で、そのお母さんが、彼をここから追い出そうとしているらしい。ここの名義が親のものなので、契約を切られたら住めなくなるそうなのだ。他にも色々と問題があり、切羽詰まっていると。なんと……。


「事情を話して、名義変更をお願いできないんですかね」

「問い合わせたら、名義変更するには敷金礼金もまるっとすべて払い直さなければいけないとのことでしたね。実質契約のし直しということになるから。大体40万ほどになるが、それを急に用立てるのが難しいので、なんとか話をして期間を延長できないか、彼の母親と話をしていたところでして」


 だから、スーツかと納得しつつも、こんなに面倒見のいい人だったのかと驚いた。紳士的な優しさを持ちながらも、隣人として引いた線からは出ない人だと思っていたので、それが不思議だった。


「結果はどうだったんですか?」

「とりあえず、彼と母親の話し合いだと感情論が先に来てしまって、話したい用件が全く進まないことはわかりました。話がまとまらないようであれば、ほかの物件を探すか、物を売ってでも金を用立てるしかないでしょう。どうしても親元には戻りたくない様子なので、私はこれ以上事を荒立てず、母親を刺激しない方がためだと思いますね」

「……えっと、これからどうするとかは決めてるんですか?」


 1ヶ月で物件探すか、物を売って40万を用立てるって結構厳しそう。

 お母さんがそんな強行的な態度にでた原因はわかってるのかな。無言を貫いている問題の当事者に目を向けると、彼は一瞬悔しそうな顔をした後、顔を伏せた。


「……家には絶対戻りたくない。どうせ、結婚の話しかしない」

「見合いをするしないで、喧嘩になったらしく。私もその件に関しては、もう少し彼の事情を考えてあげられないかと聞いてみましたが、家族のことに他人が入ってくるなと高圧的な態度でしたので……」

「お見合いかー。えっと、この件はお父さんも同じ意見なんですか?」


 私も身にしみる話題だ。周りから結婚のことを聞かれることは多い。30代近くになってくると、周りも結婚し出すからどうしても話の話題に上ってきてしまうのだ。

 私の場合は、独身で居るのが気楽で~と話を簡単に流してしまうので良いけれど、親から言われると特にきついのはよく分かる。……両親ともそうやって喧嘩してしまった。


 でも、彼の話題にはお母さんしか出てきていないので、お父さんの方に話を持って行けばどうにかなるんじゃないだろうか。結婚の話にしろ、ここの契約の話にしろ、いずれは問題になることだと思うので、両親ともとしっかり話はしておいた方が良いはず。それで両親と決裂してしまったら、もうどうにも出来なくなる可能性だってあるのだ。


「……父は多分知らないと思う」

「それなら、お父さんに連絡してみてはどうですか。……えっと、名義変更はするつもりでいるんですよね?」

「…………いちおう」

「このまま親の名義でここに住んでいれば、また同じようなことで悩まされるはずだ。親から離れるのは今が良い機会だと思うが? いま頼り切っている全部を、一度この機会に見直してみることをおすすめする」

「連絡したところで、解決できる気がしねぇ……。どうせ、いま乗り切ったところで、またあの女がないかしてくるに決まってる。職場にも連絡してるんじゃねえかな。もうどうすりゃいいんだよ」


 頭をぐしゃぐしゃにかき混ぜて、頭を抱え込んでしまった。あの女ってたぶん、お母さんのことだよね。

 ……自暴自棄になってるのかな。目の下に隈があって、顔色も病的というかまるで病んでた頃の私を見ているみたいだった。


「結局、どうしたいんですか?」


 だからかな。つい、そう言ってしまった。


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