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「本当にあった怖い話」シリーズ

みよちゃんのメモ

作者: 詩月 七夜

「ともだちになろうよ みよ」


 ある日の帰り道、気まぐれで通った路地で、こう書かれたメモを拾った。

 つたない筆跡を見ると、字を覚えたての小さい子に見える。

 「みよ」という子のことはまったく知らない。

 まあ、字を覚えたての子どもか、誰かが仕掛けたイタズラなんだろう。

 私はついイタズラ心を刺激されて、


「いいよ 〇〇」


 と、返事と名前を書いた紙きれをメモが置いてあった場所に置いて帰った。

 特に何かを期待したわけではない。

 繰り返すが、本当に些細な出来心だった。


「ありがとお。こんどあそんべくだちい みよ」


 数日後、ふと残したメモのことを思い出して、例の路地を通った。

 すると、そこにはこう書かれたメモが置かれていた。

 相変わらず字はたどたどしい。

 それに「で」がひん曲がっエ「べ」に見えるし。

 「さ」が反転して「ち」になっている。

 どうやら本当に字を覚えたての子どものようだ。

 イタズラ心から始めた奇妙な文通だったが、何となくほっこりした私は「本当に出会ったら遊んであげてもいいかな」と考えた。

 なので、


「どこで、なにをしてあそぼうか? 〇〇」


 そんな返事を残し、私は路地を後にした。


 その二日後。

 みよちゃんからの返事があるかも、と思い路地に向かう。

 すると、同じ場所にみよちゃんからの返事が置かれていた。

 私はメモを拾い上げて読んだ。


「いまから ()()()()() するよ みよ」


 私は固まった。

 おかしい。

 何かがおかしい。

 この返事を読むと、()()()「おのごっこ(鬼ごっこ?)」をやるという。

 本当だとしたら、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 それにこのメモ自体もだ。

 昨晩は雨が降っていた。

 当然、昨日のうちにメモを置いたなら、ぐっしょり濡れているはずだ。

 だが、メモは全く濡れた様子がない。

 まるで、少し前に置いたように。


「いーち」


 固まっていた私の耳に、遠くから小さな女の子の声が聞こえた。

 慌てて周囲を見回すが、路地には誰もいない。


「にーい」


 再び聞こえる女の子の声。

 気のせいか先程より近くから聞こえる気がする。


「さーん」


 三度目の声。

 それは路地の入口の方から聞こえてきた。

 同時に、何か重たいものを引きずる音も。


「しーい」


 路地に立つ人影が見えた。

 逆光で顔は見えないが、小さな女の子だ。

 そして、その手には斧が握られている。

 同時に血が乾いたような鉄さびのにおいがした。


 私は察した。

 この子がみよちゃんだ。

 そして「おのごっこ」は本当に「斧ごっこ」なのだ。

 彼女はその手にした斧で…


「もーいーかーい?」


 逆光になって見えないはずの少女の顔に、亀裂ような笑顔が浮かぶ。

 私は凍り付いた時間の中で「この遊びからは絶対に生きて帰れないんだろうな…」と、ぼんやり思考した。

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