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第四十三話 目覚めた能力

 一人、豪華な天幕にいるブリュンヒルデは、なぜ自分に薔薇の紋が生じたか一生懸命考えていた。

「うーん。ブリュンヒルデが薔薇の乙女じゃないことはゲームでも書かれていたわ。初期プロットではブリュンヒルデも薔薇の乙女の資質はあることにしていたらしいけど、実際のゲームでは削除された設定だし」

 ということは、答えは一つ。


「私が薔薇の騎士として覚醒としたということ!! ってことはやっぱりクララが薔薇の乙女だったのね。全身くまなくチェックしとくべきだったか……いやそれだと悪役令嬢の上にド変態の冠を頂くことになるわ……」

 ブリュンヒルデは納得できる答えに行きつき、ようやく落ち着けた。

「ええと、薔薇の文様は色によって薔薇の乙女との間柄を示すのよね。ピンクはたしか友情よね。うーん、なんだか嬉しいや」

 思いっきり迷惑をかけたのに自分が倒れるまで協力してくれたクララ、本当にありがたいし、感謝に堪えない。


「私が薔薇の騎士になったってことは、特殊能力も使えるようになったってことなのよね」

 ゲームでは仲良くなった攻略キャラとヒロインがテオドアの船でとある島へ行き、そこの石碑から能力解放のヒントを得る。ブリュンヒルデがストーリーを大幅に変えてしまった今、そんな遠回りなことをする気はない。


 ブリュンヒルデはゲームのイベントを思い出しながら、目を閉じて手のひらをかざす。


「この世界を創りたまいし偉大なる御身の御意思に報いるため、我が忠誠と魂をもって一輪の祝福をこの身に賜らわん」


 ブリュンヒルデは淀みなく唱えた。スチルを見るために幾度となくリピートしたために自然と頭に浮かんできた。


 手のひらが段々と熱くなり、何かの力が集まってくるのがわかる。ブリュンヒルデはゆっくりと目を開いて手のひらの先を見据えた。女神から与えられた力がゆっくりと薔薇の花へと形作る。


 ブリュンヒルデに与えられたのは黒薔薇だった。それはブリュンヒルデの手のひらに吸い込まれ、黒い色で幾何学模様の魔方陣が刻まれた。能力を使うときはその魔法陣で人知を超えた力を行使できるという寸法だ。


 しかし、能力の覚醒は成功に終わったにも関わらず、ブリュンヒルデの顔は浮かない。


「黒……黒ってなんだっけ」

 ゲームで能力が覚醒するのは攻略キャラのみで、ヴォルフラムが青薔薇で氷系、エミリオが赤薔薇で炎系、エルンストが緑薔薇で風、ルドルフが茶薔薇で土系統である。


(まずい……薔薇の騎士なのにクソの役にも立たねえ!!!! あああああどうしょうどうしょう。覚醒したら楽勝だと思ってたのにい!!!!)

 ブリュンヒルデは半べそをかきながら現状を嘆いた。


色々考え過ぎた挙句、頭がパンクして結局寝てしまった。起きたのは、補佐官の一人が夕食に時間を知らせに来た時だった。


(くっそー!! なんの案も出ないのにすっかり熟睡しちゃってたわ!!! ああもうどうしよう……)

 しょげかえるブリュンヒルデに驚いた補佐官は、なんとか元気づけようとした。

「ホ、ホルンベルガー嬢、夕食時は皇太子殿下もご一緒なされますよ。ハルティング卿も一緒ですので、もはや何の憂いもございません」

 その言葉に腐女子魂が一瞬沸き立つが、すぐに鎮火した。

 きっとブリュンヒルデの薔薇の文様のことに言及されてしまう。薔薇の騎士として何の力も持たないブリュンヒルデに期待されても困る。


(エルンストだけでも厄介なのに他の二人を説得するなんて無理無理無理!!!!)


 集団面接さながらの緊張感でブリュンヒルデの胃はキリキリと傷んだ。

 


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