水とピチャンと猿の話
かなり久々の投稿になります。
森にある小さな池にたくさんの動物と虫が集まっていました。
「やぁやぁ。お忙しい所をすまないねぇ。」1匹の猿がみんなに言った。
「・・・。」誰も何も言わなかった。
「君たちにお願いがあるんだよ。」何も気にしないように猿は続けて言う。
トンボは羽の付け根がかゆいと思った。でもかけないから諦めた。
「この森で1番大きなこの木にわしは住んでいる。ここにわしの家を造ろうと思っている。だからみんなで力を合わせて木を運んだり、ツルで木と木を縛ったりしてほしいんだが。どうだ?」まだ若い猿だったが、偉いやつは自分の事をわしと言う物だと思い込んでいた。
「それで、手伝えば何があるんだ?」年老いたカバが言う。
カエルは水の中で足がギリギリ着く所にいたので、水が揺れるとその流れに翻弄された。隣にいたキツネがカエルを頭に乗せた。
「ん?何を言うんだカバ殿。わしはこの森で1番高い所に住んでるんだよ?1番偉いんだ。ただ、その1番高い所に家が無くて葉っぱだけじゃ雨はしのげない。だから家を造る。それを手伝えと言ってるんだ。」
「みんな、水を飲んだら帰ろう。」シマウマが言う。
みんなゆっくりと動き出し水を飲んだり、話をしたりして輪は解けていった。
「なんだ!!わしの言う事がきけんのか!?偉いわしの!」お尻と顔の色を同じにしながら猿は叫んだ。
「猿の王様よ。偉い奴ってのは、みんなの事を大切に思える奴だ。自分の事だけを考えられる奴の事じゃない。」年老いて目があまり開かないゾウが言った。
「何!?馬鹿にしおって!ゆっくりしか動けないゾウのくせに!わしはお前の何倍も速く走れるぞ!」歯を剥き出しにして猿は言った。
「みんなが誰も得をしないなら手伝うのは嫌だよ。」子供のライオンが言った。
「何を言う!偉いわしの言う事に従うのはお前たちの役目だろ!地面しか走れないくせに!わしのように木を登ってみろ!」木の上から見下して猿は言った。
「誰もあんたを偉いと思ってないよ。」最後まで居たトンビが言う。
「そんなはずないだろ!わしは偉いんだ!わしのように器用に手足を使えないくせに!・・おっと手すらないんだったな。」高笑いをしながら猿は言った。
もう水辺に誰もいなかった。
「くそ!もういい!わし1人で造る!誰の手も借りん!」
それから毎日毎日大木の周りの木の枝を折ったりしながら材木を集めた。いつも遊んでいた太いツルも切って材料にした。たくさんたくさん材料を集めて木のてっぺんに家を造った。猿が1匹ギリギリ入るくらいの大きさだったが猿は満足だった。
「どうだ!お前たちの力など無くても家は作れるんだ!わしは偉いからな!」猿は大声で叫んだ。
誰も何も言わなかった。猿が1匹ただ叫んでるな。くらいにしかみんな思ってなかった。
その日の夜。雨が降って、強い風がふいた。この程度は計算して造っていたが家は壊れた。猿は頭が良かったが、1か所だけミスをした。その場所は猿の体重を支える事が出来なかった。猿は泣いた。偉い自分の家が壊れた。胸が痛くて目が熱くて眠れなかった。猿の右目の涙は地面にいたリスに落ちた。左目の涙は池に落ちた。
リスは陸にいるみんなに猿の涙と理由を伝えた。水の中の生き物は水に落ちた涙の響きで猿の涙を知った。
夜が明けて、リスとカバがやってきた。猿は木の上にいたがそんなに高い所にいなかったので、すぐに見つけられた。
「猿さん。僕は小さいけれど、この前歯で枝を切るお手伝いは出来るよ。」リスは言った。
「わたしの背中を使えばたくさんの物を運べるよ。」年老いたカバはゆっくり言った。
猿は泣き腫らした目で2匹を睨んだ。
「なんで今さら手伝うんだ!?わしが可哀想か!・・・まぁいい!何か欲しいんだろ!そうだバナナがある!これを褒美としてやろう。これが目当てなんだろ!」両手に抱えきれないほどのバナナを差し出した。
「ちょっと待って!」チンパンジーの子供が言った。「そのバナナは僕の家にあったやつだ!自分が偉いからって言って持っていったやつでしょ!返してよ!」
「何を言っ・・・。これはわしの物じゃ!」そう言って猿はバナナを自分の後ろに隠した。
「他の動物の物を盗るのは良くないよ!チンパンジーに返してあげなよ!」リスが言う。
「そうじゃな。あんたは偉いんだからバナナを盗らなくても自分で見つけられるだろう。」カバも続けて言う。
「・・・わかったよ。なんだ、偉そうに!返せばいいんだろ!ほらよ!」猿はチンパンジーにバナナを投げて返した。それからしばらくすると突然大声で猿は泣き出した。
「もう、わしには何もあげる物がない・・・。わしは何も持っていない。バナナも家も無くなった・・・。」
騒ぎを聞きつけて虫と動物が集まってきた。みんな猿を見てちょっぴり悲しくなった。
いつも偉そうな猿が大声で泣いている。本当はいつも1人ぼっちで寂しいんだ。みんなでエサを分け合ったりしてる時も猿は仲間に入ってない。ホントはみんなと喋りたいのに、仲良くしたいのに。意地悪したり、威張ったりしないとみんなとお話も出来ない。
しばらくみんな何も言わずに大声で泣く猿を見ていた。すると・・・
「猿さん。家を造るなら地面に造ってよ!僕、木を登れないから。」子供ライオンが言った。
「枝がたくさん残ってる木の近くに建てておくれ。ゆっくりしか歩けないから家と枝が遠いと時間が掛かってしまう。」年老いたゾウが言う。
「組み立てるのはあんたがちゃんとやって、指示もしてくれよ。あんたみたいに器用じゃないんだから。」トンビが言う。
「みんな・・・。馬鹿にしてごめんよ!!」また猿はワンワン大声で泣き出した。
遠くからおばさんムササビがやってきて猿を優しく包んだ。温かかった。こんな温もりはお母さんが死んでから何十年も感じてなかった。夜眠れなかった猿は眠ってしまった。
「とりあえず枝はたくさん集めておこう。」ツキノワグマが言った。
2時間して猿が目覚めるとムササビが案内して家を建てる場所へ行った。
1匹で集めた時の何倍もの枝が集まっていた。猿は驚いた。
「みんな・・。わしは間違っていた。何でも1人で出来ると思っていた。わしは偉いから何でも出来るんだって・・・。でもみんなのほうが凄かった。本当に、本当にごめんなさい。」猿は頭を下げた。
「あの・・・。みんなが住めるくらいの大きな家を造るというのはどうだろうか?」続けて猿が言った。
「わたしも住めるんだろうか?」年老いたゾウが言った。
「・・・も、もちろん!とても大きな家を作ろう!!」猿は言った。みんな笑った。
トンボは羽の付け根がかゆかった。カエルは暑かったので陸から水に入った。
その時に飛んだ水滴はもう1度池に戻りピチャンと音した。




