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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

生者に口有り、死人に脳無し

「魂っていうのは、脳細胞とかその原子が継いでいるんだ」


 と、君が言ったとき、僕は本当に困ったんだ。


 わかっていたよ、君の感性がどうもおかしいってことは。それまでだって君は、突拍子もない話題を振って僕を困らせていたものだ。


 ただ、そのときは別格だった。まず言っている意味がわからなくて、どういうことだい、と問い返すと、余計にわからなくなってくる。君の言うことは宗教的なようで、哲学的なようで、でもそんな高尚なものではなくて、まあ、よくわからないんだ。


「じゃあ例えばだ。ある妊婦が牛の脳味噌を食べたとする。脳を形作っていた分子が胃で分解されて、今度は胎児の脳を形作る。すると······、言うなれば、前世が牛の人間が誕生するわけだ」


 ようやく、なんとなく意味がわかってくると、まあ面白い話なんだ。君の話なら何だって面白い。だけど脳味噌がどうこうなんて、シチューを掬いながら話すことじゃない。


 それなら、この鳥肉を食べている僕はどうなんだい。僕の前世は養鶏場の鶏だったのか? と聞くと、君は可愛く笑ってから、


「お前の脳は腿とか胸にあるのかい」


と、可愛げのない返事をしてくる。こちらが話に乗ってあげたらこれだ。もう少し、変人に付き合ってやれている僕に感謝して欲しいものだ。


 でも、そんな君が好きだったのだ。浮世離れしたようで、その仕草は誰より人間だった。仕事から帰って来ると、君は真っ先にテーブルについただろう。その先の笑顔、とは違うか、だけど確かに満足げで、微かに頬の血色が良くなっているのを見るのが好きだった。僕の料理を肌で褒めてくれる、君が何より愛おしかった。


 だから僕は君を食べたのだ。


 天井に吊り下げられた君を見つけて、僕はとにかく大慌てで縄を切り、君の死を悲しんでいる内に、君の話を思い出した。君が死んだのだから、君の話を回想するのは当然であり、僕の義務だったのだ。


 僕は君の来世になりたかった。時間が経って記憶がなくなってしまう前にと、(のみ)で頭蓋をこじ開け、君にむしゃぶりついた。手で千切る間も惜しかった。無心で食べる内、段々僕が君になっていく感じがした。


 空を向いて、そっと微笑んでみた。ああ、君だ。君が僕にいる。君が私にいる。


 

タグ付けこれで合ってますかね?

なろう復帰しようとして過去話を見返してたら3年くらい放置された下書きを見つけたので供養。

今こんなん書ける気しない。自惚れかもしれないけど。

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