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「まあ、いいわ」とのはらはいう。
「私の名前はのはら。木原のはら。よろしくね」とにっこりと笑ってその右手を岬の前に差し出しながらのはらはいう。
「あ、初めまして。僕は岬って言います」とその差し出された手を遠慮がちに握りながら岬は言った。
『あら、岬くん。ちゃんと初めて会った知らない人にきちんと挨拶ができてい偉ですよ』と小さな声で妖精さんは言った。
「私の家。すぐそこにあるんだ。森を挟んでいるとはいえ、岬くんとは『お隣さん』ってことになるのかな?」とのはらはいう。
「はい。きっとそうだと思うます」岬は言う。
「よし。わかった。じゃあ、岬くん。せっかくこうしてお隣さん同士で会ったんだから、これから私の家に遊びにこない?」とのはらはいう。
「え? いいんですか?」と驚いた顔をして岬は言う。
「もちろん。いいよ。岬くんさえ良ければね」ふふっと笑ってのはらは言った。
「えっと、じゃあ、お邪魔します」と岬は言った。
「うん。いいよ。じゃあ、一緒に行こう」とにっこりと笑ってのはらは言った。
それから二人(と妖精さん)は手を繋いだままのはらの家のお花畑の中を歩いて、(人の歩ける道があった)すぐ近くにあるというのはらの家まで歩いていった。
その間、歩きながら岬はずっととても綺麗な色とりどりのお花畑の風景を眺めていた。(最初はのはらと手をつないで歩くことがすごく恥ずかしかったのだけど、綺麗なお花畑の風景を見ていたら、そのことはあまり気にならなくなった)
のはらはそんな岬を見て、嬉しそうな(少しだけ自慢げな)満足そうな顔をしていた。
妖精さんも、ずっと岬の頭の後ろに隠れながら、そんな綺麗なお花畑の風景を眺めているようだった。
『綺麗ですね』と(のはらに聞こえないような小さな声で)妖精さんはいった。
「本当だね」と小さな声で岬は言った。