1 彗星を見にいくの、楽しみだね。
サイレント彗星と僕 のはらを探して
登場人物
岬
美波お姉ちゃん
お父さん
木原のはら 隣人 お姉ちゃん
木原しばふ 隣人 弟
妖精さん
プロローグ
イメージシンボル 雨
……それは、奇跡の一ヶ月だった。
世界には小雨が降っている。
……悲しい雨。
そう感じるのは、僕が今、泣いているからなんだろうか?
あの、僕と友達になってください。
本編
夏休みのはじまり
彗星を見にいくの、楽しみだね。
岬がその不思議な白く光る(まるで、蛍みたいな)季節外れの雪の塊のような妖精さんに出会ったのは、夏休みの虫取り遊びを家の近くにある森の中で、一人でしているときだった。
「こんにちは」と白く光るふわふわと空中に浮かんでいる、妖精さんは言った。
「こんにちは」と岬は、そんな不思議な妖精さんに答えた。
妖精さんと友達になった岬は妖精さんを自分の家に連れて帰った。でも、岬が妖精さんと友達になったことを家族の誰も(お父さんも、美波お姉ちゃんも)信じてはくれなかった。(それが岬にはちょっとショックだった)
でも、それも仕方のないことだった。なぜなら、妖精さんの姿は、どうやら岬にしか見えないようだったし、その声も聞こえないようだったからだ。
そのことを妖精さんに伝えると「本来そういうものです。岬くんのように、私の姿が見えたり、私の声が聞こえるほうが珍しいのですよ」とにっこりと笑って、岬に言った。
岬は妖精さんの言葉を聞いて、そうなんだ。そういうものなんだ、とその不思議な現象を妖精さんの言葉だけで、納得した。