どうせなら転生してみよう
人を支配するということに魅入られたのはいつからだっただろうか。
中学生?小学生?生まれた頃?それとも高校生になってからだろうか?
少なくとも今現在、僕は人を支配する…つまり人の上に立つことに魅入られている。
気の許せるハズの友人と接していても、気がつけば自分より劣っている点を探してしまう。
「自分の方が優れている。」
そう思いたいのだ。
故にこれは傲慢な僕に対する罰だったのかもしれない。
夜のホーム。後ろから不意に衝撃が走る。身体が前につんのめり、目の前一杯に光が広がる。そして…。
グシャッ。
次にの瞬間。騒ぎになるホームや辺り一面に飛び散った血や肉片を上から眺めつつ僕は上へ上へと登っていった。
人はこんなにも呆気なく死んでしまうのか。
そんな感慨に耽っていると、突然重厚な鐘の音が聞こえてきた。
気がつくと周りには光る雲が立ち込め、下を見てももう街は見えない。
「おめでとうございます。あなたはもう一度人生をおくる権利を手に入れました。」
抑揚のない声が頭上から響く。声のする方を見ると、そこには真っ白な服を着た仏頂面の中性的な男がいた。
男の頭の上には光る輪があり、背中からは翼が生えている。
「誰ですか?あなた?」
僕が尋ねると男は答えた。
「ああ失礼。私の名前は名乗れないんだ。しかしまあ見た目どうり“天使”とでもよんでくれるかい。」
見た目通り天使だとさ。すごいこと言うもんだ。
「それであなたは転生を行いますか?」
転生か。まさか僕が体験することになるとは、本当に先のことなんて分かったもんじゃない。
「まあせっかくだから転生するよ。それで僕はどんな世界に転生して、どんな能力を貰えるんだい?」
「君は魔王に侵略されつつある世界の勇者に転生しますよ。そのあとは生きている限り基本干渉しませんので、第二の生をごゆるりとお楽しみください。」
天使はそう言い、指を打ち鳴らす。
すると視界が暗転して…。