祝福満たす深緑の瞳が煌く日
大変ご無沙汰しております。
自身の誕生日に書いて、すっかり投稿し忘れておりましたものですが、年末のお供にそっと――。
眩い陽光に、木漏れ日をそそいで輝く、美しい神秘の森の中。
ふわり、ふわり、とあちらこちらで、色を違える赤子の拳大の光球が生まれる。
自然の力を満たし司る、精霊と呼ばれる存在の中でも、下級精霊と呼ばれる者たちの誕生であった。
「MerSii!」
樹々の傍、花の上で次々と生まれいずる色とりどりの光球に、幼げな声を弾ませ、呼びかける者がひとり。
その小さな足が駆けるたび、金と見まがう黄緑の髪が、やわらかに跳ねる。幼くも整った中性的な顔にそろう深い緑の瞳が、確かな喜びを満たして煌いていた。
人族の外見基準を照らし合わせると、まだ四歳かそこらの、幼い子。しかし、小さな光球が生まれるたび、ぴくりぴくりと動くその耳は綺麗に細長く、その子が植物と精霊の隣人たる、エルフ族であることを示していた。
鮮やかささえ放つ、幼くも見惚れるような満面の笑みが、すぐそばで生まれた隣人へと向けられる。
精霊さん! と嬉しげな声音が、辺りに優しく響いていく。
伸ばされた小さな左の掌に、小さな緑の光球が乗る。それをそっとそっと右手の指でなでる姿に、辺りに微笑ましさが満ちた。
「Ainameles!」
〝おめでとう〟と紡ぐ、祝福の言の葉に、木漏れ日の煌きが重なる。
新たな隣人たち、友人たち、家族たちの誕生に、少年はまた、嬉しそうに笑った。
木霊す祝音。
〝精霊王の祝福を〟――と、幾重にも響き、美しい森に誕生を祝う音が満ちる。
くるくると辺りを見回し、ふわりと生まれる家族に、〝おめでとう〟と笑いかける。
幼い緑光の祝福が、寄り添い生きて行く命へ、輝かしくそそがれていた。
――これは、いまだ幼き緑光のエルフの物語。
誰よりも隣人たちを愛する、彼の祝福に満ちた、ひとときの記憶。
深緑の瞳が満たした、祝福をおくる――煌きの日の幼年秘話。
ほとんど物書けぬ年ではありましたが、一年ありがとうございました。
また来年も、よろしくお願いいたします!