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モンスター討伐なんて残酷なことは俺に出来ない  作者: 両生類
異世界転移生活編
5/19

5話 鉱山探索

5話目!

前回の続きからです!

今回は、戦闘シーンがありません…

少しのんびりした感じになってしまったかもしれませんが、是非見ていって下さい!

扉の奥は少し大きな部屋になっていた。

それにしても、あのトロール達を配下にしていたのだ。

一体、どんな魔物がいるのだろうか?

不安に思いながら中に入る。


中には、古びた玉座が置いてあり、床には赤い絨毯が敷いてあった。

そして、その玉座の前に一匹の魔物が立っている。

そこに居たのは…スライム。もとい、マリムだった。


お前かよ!!


後ろを向き、偉そうに腰に手を当ててふんぞり返っているので、こちらには気付いていないみたいだ。

いや、おかしいだろ!?

数日前まで冒険者に殺されかけていたあいつが…?

まさか…そんな、人…間違えた。魔物違いだろうか?

…そうだ!そうに違いない。

普通に考えて有り得ないからな。

その正体不明のスライムは大袈裟に振り返り、大きな声で話し始めた。


「ふふ、よくぞここまでたどり着いたな!人間!!」


見た目も声もマリムそっくりだ。と言うより、マリムそのものだ。

というか、無駄に張り切り過ぎだろ。

それっぽい事を言っているが、そんな大規模なダンジョンでもなかっただろ?

とりあえず、まだマリムと決め付けるべきでは…


「だが!!トロール達を倒せたとしても、この私に勝てると思うな……って、あれ?…静人?」


うん。マリムだ、こいつ。

まあ、流石に分かってはいたが…正直あまり信じたくない。

いくら何でも、成長するの早すぎだろ!

この短期間でトロールを従える程、強くなるとは…

それに比べて、俺はまだ何も変わっていない。

このままでは、いつかスライムに負けてしまうのではないか?

そんな心配をしていた。

それにしても、さっきのセリフは何だ?

マリムがあんな痛々しい事を言っていたと思うとこっちが恥ずかしくなってくる。

俺は苦笑いしながら口を開く。


「まさか、魔物達のボスがマリムだったとは…驚いたな」


「……それと、あの語りは止めておいた方が良いと思うぞ(小声)」


言おうか迷っていたが、これ以上黒歴史はつくって欲しくないからな。

はっきり(?)言ってやる事にした。

ちなみに、俺はいくつかヤバい黒歴史を持っている。

幸い誰にも知られていないが、あの事を考えるのも嫌だ。

それを思い出す度に過去の自分を全力でぶん殴ってやりたくなる。

マリムは頭の後ろに手を当て、恥ずかしそうにしながら答えた。


「いや~いつまで待っても誰もこないから、暇だったの。でも、凄い音が聞こえてきたから、張り切って、精一杯もてなそうとしたら…あんな結果に…」


自覚はあったらしい。

指摘をすると、少し落ち込んでいる様子を見せた。

やはり、触れるべきでは無かっただろうか?


「ま、まあ…そんなに悪くはなかったとおもうぞ?威圧感とかあったし、それに…ゴニョゴニョ」


俺はすかさずフォローを入れる。

最後の方は少し濁したが、何とかしようとする、この姿勢を褒めてもらいたいものだ。

そう言うと、マリムは嬉しそう笑顔を浮かべて聞いてくる。


「それじゃあ、これからもあんな感じで冒険者を…」


「止めとけ」


俺が即答すると、良い笑顔のまま固まった。

会話が途切れると、サテラが話し掛けてくる。

部屋に入ってから一言も話していなかったが、別に忘れていた訳ではない。

…本当だよ?


「ねえ、もしかしてこのスライムって、あなたが前に助けたっていう…」


「ああ、そうだ。少し元気が良すぎるが、まあ良い奴…だと思う」


「それは、あなたの元気が無さ過ぎるだけだと思うのだけれど…」


「それにしても、トロールのボスがスライムだったなんて…そんな事、あり得るのかしら?普通に考えて、異常よ。やはり類は友を呼ぶみたいね」


それ、自分も含まれている事を忘れるなよ?

まあ、確かにマリムがボスなんてな…

何故こうなったか、少し聞いてみる事にしよう。

自分の成長に繋がるかもしれないしな。

俺はいまだに動こうとしないマリムに声を掛ける。


「おい、しっかりしろ」


マリムの反応は無い。

俺はマリムの肩を掴み、体を揺らした。


「おーい。聞いているのか?」


ベチャ


何か飛んできた。

スライムジェルだ。揺らすべきでは無かった。

顔に飛んだジェルを袖で拭いながら後悔する。

服にまで付いてしまった…後で洗っておこう。


…それにしても、いい加減起きろよ。

俺は周りに飛び散ったジェルをすくい、マリムに頭から掛けた。


「はっ!私は何を…?」


ようやく気が付いたようだ。

あのまま、ずっと落ち込んでいたらどうしようかと思ったが、まあ良かった。

というかこいつ、さっきの事を記憶から消してないか?

俺は考えるのを止める。

それに触れるのはやめておこう。


「あれ?静人、服にスライムジェルが…もしかして私が?」


「いや、あまり気にしなくて良い。それより自分の方をどうにかしたらどうだ?」


「うん!よく分からないけど、何だかゴメン…」


マリムに全く非はないのだが、それっぽくごまかす。

華麗な責任転換だ。

マリムは顔のジェルを吸収した。


「待っててね、静人のも今取るから」


「…?」


どうやって取るのだろうか?

全く検討がつかないので、ただ見守る事にした。

黙って言われた通りに待っていると、なんと、体に付いていたジェルが動きだす。

周りに落ちているジェルも集まり、1つの塊になると、マリムの方に向かい、そのまま吸収した。


「…これは?」


「ああ、まだ言って無かったね!冒険者を倒していったら、新しい技が使えるようになったの!それで、今みたいに自分と離れたジェルも操れるようになったんだよ!」


魔物も人間と同じようなシステムで強くなるらしい。


「それと…はい、これ!」


そう言って、青い球を渡された。

これもスライムジェルだろうか?

しかし、それにしては普通より大分硬い気がする。

鉄並みの強度はありそうだ。


「ジェルの硬質化も出来るようになったんだ!用があるときは、これを通じて会いに行くから、静人が持ってて!」


なるほど。そう言う事か。

俺はその球を鞄にしまった。

それにしても、2つも技を獲得しているとはな。


「お前…一体、何人の冒険者と戦ったんだ…?」


「よく覚えてないけど…ここ数日は朝からずっとかな~。でも、技を使えるようになってからは大分楽になったよ!トラップを仕掛けて、一方的に攻撃をするだけだからね!」


つまり、前に会った時からずっと?

それは何人の冒険者の犠牲がでているんだ。

しかも、トラップまで使っているとはな…

マリム…いつの間にダークサイドに落ちてしまったんだ…?

いや、魔物だし元々ダークサイドか。

マリムの笑顔が猟奇的に見えてきた。

何この子、凄く怖い。


「それより、静人の方は?何か変化はあった?」


「俺か?そうだな…特に何も起きてない。強いて言えば悪霊に取り憑かれた位だ」


鋭い視線を感じる。

きっと悪霊のせいだ。

あまり気にしないでおこう。


「それって結構、重大な事じゃ…?で、その後はどうしたの?」


「どうするも何も、今もここにいるぞ?」


「えっ…!?ここに?」


マリムの顔が一気に青ざめる。


「やだなぁ!そんな冗談、少し驚いたよ!」


「本当だぞ?ほら…」


俺はサテラに小石を投げ当てた。

これでマリムには空中で跳ね返っているように見えるだろう。


ガンッ


大きめの石が飛んできて俺の背中に激突する。

手加減など微塵も感じられないスピードだ。

…少しは躊躇しろよ。

俺は背中を抑えながら立ち上がる。


「痛てて…これで、信じて貰えたか?」


(本当みたいだけど、何だか仲良さそう…悪霊、なんだよね?)


「う、うん!信じるよ!……あっ!!そうだ!そう言えば、静人は何でここに?」


何だか、軽く流された気がする。

あんなに体を張ってまで証明したのに…

というか、目的を完全に忘れていた。

まあ、マリムがいたという衝撃が強すぎたから仕方ない。


「ああ、鉱山が魔物に占拠されたから何とかしてほしいという依頼を受けてな」


「そうだったんだ…静人も冒険者だもんね!」


「そう言えば、魔物は複数いると聞いたんだが、あの2匹だけなのか?」


「いや、あのトロール達が入ったのは最近だよ?前はもっといたんだけど、みんなトロールを怖がってね…強い魔物とかも攻めに来るようになって、全員止めていったんだよ…」


なるほど、それであんなに少なかったのか…

難易度1の場所にあんな強いのが居たのも納得できる。

元はどのくらい居たのだろうか?

おそらく、雑魚モンスターだけだったとは思うが、相当な数が居たに違いない。

トロールに怯えるような魔物が少数で2つのギルドに勝てるとは思えないからな。


「そうか…また仲間が集まるといいな!」


「うん!ありがとう!それで、私達はここを出て行けばいいの?」


「そうして貰えるとありがたいな」


「それなら、そうするよ!…でも、これからどこで暮らせば良いんだろう?」


「そうだな…だったら、既存のダンジョンを攻略したらどうだ?誰にも迷惑はかからないだろうし、仲間も増やせると思うぞ?」


「なるほど!そうすればいいんだ!ありがとう、静人!」


今考えて、適当に言っただけなんだがな…

本人が納得しているならそれで良いのだろう。

まあ、とりあえず、これでこのクエストは達成だ。

ギルドクエストの割には案外、簡単だったな。

だが、それも当然か、ボスが顔見知りだったしな。

別のダンジョンなら、もっと手こずっていたかもしれない。


「用件は済んだし、俺はこれで帰るぞ。それじゃ、またな」


サテラが腹を空かして、また機嫌が悪くなる前に早く帰ろう。

俺がそう言って戻ろうとするとマリムが呼び止めた。


「あ!待って、静人!頼みたい事があるんだけど…」


俺は立ち止まって振り返る。

頼み事?何を頼まれるのだろうか?


「実は、また技を考えて欲しいの!私じゃあ、あまり良いのが思い付かなくて…」


何だ、そんな事か。

そのくらいなら、俺でも出来るな。

既に1つ思い付いているし、それで良いだろう。


「離れたジェルも操作出来るようになったんだろ?それなら、召喚系の技とかが良いんじゃないか?」


召喚と言っても、ジェルを動かして戦うだけだがな。

結構ありがちだが、実用性のある技だとは思う。

ジェルに戦わせて、自分は安全な場所で見ているだけでいいからな。

…その技、何だか俺も使いたくなってきた。

俺の体からも、ジェルが出るようになれば良いのに。


「召喚系?」


マリムは分かっていないようだ。

まあ、そうだろうな。

俺は簡単に技の説明をする。


「ああ、形を変えたジェルに戦わせるんだ。硬質化させた武器を持たせてな」


「…こんな感じかな?」


マリムはジェルを出し、形を変えていく。

それはあっという間に大きくなり、俺が戦っていたと思われるトロールの姿になった。

それが複数できて、それぞれ自由に操作が出来るみたいだった。

何なんだ?このチートスライム。

さっきのトロールを無制限で作り続ける事が出来るのだぞ?

スライムは最弱だったはずだが…どうしてこうなった?


「凄いよ!私、何だか、また強くなった様な気がする!」


「そうか、それは良かったな」


「うん、ありがとう!引き留めてゴメンね!それじゃ、またね!」


「ああ、またな!ダンジョン攻略、頑張れよ」


俺はマリムに手を振り返しながら、鉱山を出ていく。

それにしても、驚いたな…

まさか、あんな所で会うとは思っていなかった。

前とは比べ物にならない程、強くなっていたしな。

…あいつはいつか大物になるような気がする。


鉱山から出ると、強い日差しが照りつける。

もう、昼頃だろうか?

時間がたつのは早いな。


「静人、早く歩きなさい。町に着いたらすぐに昼食にするのよ?」


お腹を空かしているサテラが俺を急かす。


「いや、俺もそうしたい所なんだが…トロールと戦った時の技のせいで、体が重くてな。上手く歩けないんだ」


「そう…それなら、お金を渡してちょうだい?私が先に行って食べ…待っているから」


俺は置いて行くのか。

というか、どうやって注文をするつもりなんだ?

お前がどう頑張っても、怪奇現象にしかならないだろ。

幽霊には無理だ。諦めろ。


「駄目だ。黙ってこのまま歩け」


「それじゃあ、この前みたいに浮かして…」


「昼飯も抜かれたいのか?」


サテラはぶつぶつ文句を言いながら、ふわふわ浮いて進み始めた。

町まで、そんなに距離は無いだろ?

もう既に町は見えているしな。

おそらく、後5分、10分程度で着くだろう。


歩いていくと、思っていた通り、すぐに町に到着した。

それでは早速、飯!と言いたい所だが、先に宿に荷物を置きに行く事にした。

サテラは不満気だが、先生やクラスメートの様子も気になるしな。

もしかしたら、俺がいない事に気が付いて探しているかもしれない。

そう思い、宿に向かって歩き出した。


宿に着き、部屋の中に入ると、十数人位が中にいた。

疲れて休んでいる人もいれば、元気に騒いでいる奴もいる。

俺が入っても、何の反応も無かったので、探していたということはなさそうだ。

つまり、俺がいない事に誰も、全く気が付かなかったと。

まあ、分かってはいたがな。


サテラが、誰にも何も言って貰えない俺を、可哀想な人を見る目で見てきた。

俺が睨み付けると、すぐに目を逸らした。

荷物を起き、お金を持つと、そのまま部屋を出た。

よく考えたら、部屋にお金を置いておくのは危険だったな。

誰かに盗まれるかもしれない。

主に、花井とか花井とか花井辺りがやりそうだ。


外に出ると、すぐに酒場へと向かった。

ちなみに、組合で聞いた話によると、俺が鉱山を出たすぐ後に魔物達が出ていくのが目撃されたとのことだ。

それで、俺達のギルドの功績とされ、報酬の一部が支払われたらしい。

全部、俺が1人でやったのだから、俺に払うべきだろ?

そう思ったが、仕方がないので諦めた。


酒場に入ると、すぐに席に座って注文をした。

サテラに言われて、かなりの量を頼んでしまった…

料理が運ばれるとサテラは黙って黙々と食べ始める。


「はぁ…」


料理を運んできたアイノさんがため息をついていた。

何やら落ち込んでいるようだ。


「何かあったんですか?」


俺がそう言うと、向かいの席に座って話し出した。

…あれ?仕事中だよな?

当然のように座っているが、きっとまた怒られるのだろうな。


「それがさぁ…早くお金を返そうと思ってお金を借りたら、借金が倍になっちゃて…」


アイノさん…また騙されたのか。

どうせ、また怪しい所からお金をかりたのだろう?

少しは人を疑うという事を知った方が良い。

まあ、俺は誰も信じないようにしているから大丈夫だろう。

…俺って、人間不信じゃないよな?

おそらく違う。というか、そうであって欲しい。

今のは考え無かった事にしよう。


「それは大変ですね…早く返せるように祈ってます」


俺は微妙な顔でそう返事をする。

不意にサテラの方を見ると、あれだけあった料理がもう食べ終わりそうだ。

どれだけ食べるつもりなんだ?

食べ始めた時から、口に運ぶ速さが変わっていない。


「あの…アイノさん、追加の注文をしても良いですか?」


「え?あれ?いつの間に食べてたの!?さっき見たときは、まだ全然残ってたのに…」


アイノさんが隣の山積みになっている皿を見て驚く。


「はは…僕の魔法ですよ」


「ふ~ん、そんな魔法もあるんだ?結構、便利そうね!」


駄目だ、この人。

言うことを鵜呑みにし過ぎだろ。

どんな嘘をついても、全くバレる気がしない。

これはもう、俺にどうにか出来るような問題ではないな…


アイノさんが仕事に戻り、しばらく待つと料理が運ばれてくる。

それをサテラがあっという間に食べた。

サテラは、それで満足したみたいだったので、俺は会計を済ませる。

俺の所持金を、この昼だけでほとんど使ってしまった…

本当は、あと数日分の食事代は残っていたのだが、これでは明日の昼までしかもたない。

サテラは、たくさん食べられて機嫌が良さそうだ。

何だか最近は、ずっと金の事に追われている気がする。

これじゃあ、アイノさんの事も言ってられないな。


仕方ない、また明日もクエストを受けるとするか…

俺はそう思いながら宿に戻る。

明日も朝が早い、今日は早く休むとしよう。

結局、その日はまだ昼だというのに、宿に戻ってからすぐに眠りにつき、そのまま翌日の朝まで起きる事はなかった。





マリム再登場です!

前回の続きをすぐに終わらせて、次の展開にいくつもりでしたが、丸々1話分使ってしまいました…

次回は普通のクエスト回にして、戦闘シーンを入れる予定です!

それでは、また来週中に投稿するので、宜しくお願いします!

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