4話 集団行動
投稿遅くてすいません!
一応、昨日の内には書き上げていたんですが、誤字チェックをしていたら遅くなってしまい投稿が今日になりました。
ちょいちょい文章に違和感もありますが、これ以上改善出来る気がしません…
これから文章力が向上していくと良いんですがね…。
今回は、少し短めですが、楽しんで頂けたら幸いです!
「あら、おはよう。死んだ魚みたいな顔してるわよ?」
目が覚ますと、サテラが空中遊泳しながら聞いてきた。
既に死んでいる幽霊に言われたくない。
起き上がって外を見てみると、まだ日が上りきっていないようで薄暗かった。
周りを見ても、まだみんな眠っている。
どうやら、早く起きすぎたみたいだ。
俺は座ったまま放心状態になる。
…暇だ。何もする事がない。
そんな俺に気付いたのか、サテラが提案をしてきた。
「枕投げでもする?」
断る。
いや、やるわけ無いだろ?
お前とやると、それはもう遊びでは無くなる。
俺が一方的に枕で叩かれるだけだ。
まあ、こいつは最初からそのつもりだったのだろう。
全く、良い性格をしているな。
俺はサテラに枕を投げつけ、そのまま二度寝を始めた。
久しぶりに落ち着いて眠れる。
朝だと"黒の支配者"が発動する事も無いし、金縛りに合わずに済むのだ。
「あなた、また眠るつもりなの?」
何か聞こえてきた気がするが、そんな事は知った事ではない。
俺は布団に潜る。
しかし、よほど暇なのか、サテラがどうしても起こそうとしてくる。
「駄目よ、起きなさい。ねえ、ねえったら…」
「……」
しばらくすると、声が止んだ。
どうやら諦めてくれたみた…
「ガふッ!?」
突然、金沢先生が変な声を出す。
まさか…
俺は慌てて起き上がり、先生の方を見る。
案の定、先生の顔には俺の枕が叩きつけられていた。
サテラがしてやったみたいな顔をしてこっちを見ている。
やってくれたな。
「うう…誰だ?俺に枕を投げたのは…」
先生が目を覚ました。
まずい。このままでは直にバレる。
サテラ…何て事をしてくれたんだ。
「分かった!起きるから、早く枕を回収してくれ!」
「無理ね。枕があなたの所に飛んでいったら犯人確定よ」
「ぐっ…」
そんな会話をしている内に先生がみんなを起こし始めた。
状況が悪化しているじゃないか。
「おーい!お前ら、朝だ!そろそろ起きろ」
先生が声を掛けると、何人かが目を擦りながら起き始めた。
そして、大半の生徒が目を覚ますと、先生が質問をする。
ちなみにこの大半にはもちろん花井は含まれていない。
「なあ、俺にこの枕を投げたのは誰だ?」
先生が枕を掲げ、みんながそれに注目する。
言い方からして、別に怒っている訳ではないみたいだ。
しかし、後で見つかるよりも、素直に言った方が良いだろう…
俺は覚悟を決め、仕方なく言う事にした。
「…すいません。僕みたいです」
「内灘?お前がやったのか?」
先生が意外そうに聞いてくる。
俺がやった訳ではないのだが…
俺はサテラに視線を送る。
サテラは目をそらし、先生の後ろに隠れた。
…こいつ、後で覚えてろよ。
「は、はい!寝ぼけていたみたいで…今後は気を付けます…」
「そうか、あまり気にするな。寝ぼけてたなら仕方がない」
何とか許して貰えたみたいだ。
周りはそんな事には興味が無いようで、ふざけながら話をしている。
好きの反対は無関心と言うが…
俺はそもそも認知されているのか?
「よし!じゃあみんな、各自で食事を済ませたら宿の前に集合だ!まだ寝ている奴には起こして伝えるように!」
先生はそう言うと、着替えて部屋を出ていった。
集合…何か用でもあるのだろうか?
それより、俺も早く支度をして朝飯にしよう。
「静人、早くしなさい。朝から魔力を使ってお腹が空いたわ」
こいつ、どの面下げてそんな事を言う?
誰のせいだと思っているんだ。
サテラは罪悪感など全く感じていないようだった。
「何を言っている?お前は朝飯抜きだ。少しは反省しろ」
「なっ…!!そんなの無いわよ!」
「知らん。金を払うのは俺だ」
「ぐっ…静人、私が悪かったわ。朝ご飯を食べさせて」
「お前、朝ご飯の事しか考えて無いだろ?」
「よく分かったわね。そうよ、私はお腹が空いているの」
「何を言っても無駄だ。諦めろ」
「そう…駄目なのね………チッ…」
こいつ、今舌打ちしなかったか?
サテラはふわふわ浮きながらすねている。
確かに、少し可哀想な気もするが…
濡れ衣をかけられた上に大勢の前で先生に謝る事になった俺の心の傷よりはマシだろう。
俺はそんな事を考えながら支度を済ませ、部屋を出た。
部屋を出ると、金沢先生が女子の部屋の前にいた。
おそらく女子達を起こしに来たのだろう。
ノックをしてドアを開けると、女子が悲鳴を上げながら先生に枕を投げる。
朝から何度も枕を投げられるなんて、先生も色々と大変だな。
横目でそんな光景を見ながら、先生の幸運を祈った。
宿を出ると、酒場へと向かった。
俺は朝はパン派なのでサンドイッチを注文する。
サテラがそれを食べたそうに見つめる。
昼まで我慢しろ。
食べようとすると体が動かなくなり、サンドイッチがサテラの方へ飛んでいった。
だが、そんな事は想定済みだ。
俺はサテラが食べようとするのを"暗黒形"で阻止した。
必死に食べようとしているが、しばらくすると諦め、俺を睨んだ。
俺は優越感に浸りながら美味しくサンドイッチを食べる。
今日はアイノさんの姿は見えず、店内は静かだった。
この時間では、まだ来ていないのだろうか。
俺はあっという間に完食して店を出る。
宿まで戻ると、既に何人かが待っていた。
けれど、まだ今から食べにいく奴もいるようなので、しばらく待つ事になりそうだ。
サテラの方を見るてみると、まだ機嫌が悪そうにしている。
幽霊しか話し相手がいない俺は黙って集まるのを待つしかない。
時間をつぶすにしても、特にする事も無いのだ。
それから数十分ほど一人町を眺めていると、全員が集まった。
…花井を除いて。
またか。あいつは時間を守るという事を知らないのか?
それから少しすると、花井が眠そうに宿から出てきた。
まだ寝てたのかよ。
誰も起こしてくれないのか?
「あれ、何でみんな集まってるんだ?」
話も聞いていないらしい。
まあ、寝ていたのなら当然か。
花井が来ると、先生が人数を数え始めた。
先生は真面目なので、学校のマニュアル通りにしているのだろう。
花井は決まって一番最後に集まるので、それを目安にしているらしい。
数え終わると、先生はみんなを静かにさせて話を始めた。
「みんな揃ったみたいだな!では、今日は"ギルドクエスト"を受ける事にした!だが安心してくれ。難易度は1なので、みんなで力を合わせれば出来るだろう。それでは早速出発するぞ!」
そう言うと列をつくり、そのまま町を出た。
なるほど…ギルドクエストか。
おそらく、最初から少数で戦うのは危険だと考えたのだろう。
確かに先生も生徒を見ていられるし、少しは安全に戦えるかもしれない。
そんな事を考えながら歩いていると、前から紙がまわってきた。
どうやら、クエストの受注用紙みたいだ。
依頼は…鉱山が複数の魔物に占拠されたので、追い払って欲しいとの事だ。
今向かっている場所が、その鉱山らしい。
ちなみに、既に2つのギルドがクエストに失敗しているみたいだ。
…俺達で勝てるのか?
何だか、無理な気がしてきた。
いくら弱小ギルドだったとしても、戦闘初経験の集団よりはまだ強いだろう。
それが2つも負けているのだから、俺達に出来る訳がない。
先生は難易度だけを見ていて、クエスト失敗数には気が付かなかったようだ。
けれど、俺には今さらどうする事も出来ないので、ただ歩くしかない。
鉱山は町から少し離れていたが、さほど時間はかからなかった。
まあ、今まで長距離の移動が多かったので、そう感じだけかもしれないが。
中に入る前に、先生が何かを配っていた。
どうやら、"発光玉"という魔法道具らしい。
この玉は、魔力を注ぐと小さいながらも強い光を出すもので、10分程持続すると説明を受けた。
俺には"黒の支配者"があるので必要ないが、一応貰っておく事にした。
鉱山の中はかなり眩しかった。
おそらくみんなは暗くて何も見えていないだろう。
周りが発光玉を使い始めると、明るさが少しマシになった。
前の方には花井が見え、どんどん先に進んでいた。
「お前ら、何でそんなに離れてるんだ?早く来いよ」
どうやら花井を囮にすることは満場一致で決定らしい。
花井の身に何かが起きたら、直ぐに逃げる事にしよう。
少し歩くと、開けた場所に出る。
"黒の支配者"の効果が消えた。おそらく明かりがついているのだろう。
…思った通り、壁には照明が付けられていた。
「お、おい!あれ見ろよ!か、怪物がいるぞ!」
誰かがそう叫んだ。
怪物じゃなくてモンスターな。
そいつの視線の先を見ると、そこには2人の男がいた。
スキンヘッドで、筋肉質で上半身は裸のかなりゴツい奴だった。
普通じゃあ有り得ない程の筋肉だし、モンスターで間違いないのだろうが…
モンスターにも性別ってあったんだな。
今まで出会ったのは女性だけだったので、そういうものだと思い込んでいた。
みんなは、初めて見るモンスターに威圧され、黙りこんでいた。
相手は俺達に気付いたらしく、こっちに向かってくる。
「おい、敵襲みたいだぞ」
「ああ、分かっている。まあ、また蹴散らすだけだ」
周りは後退りし、女子達は離れた所で怯えていた。
花井はというと、女子に紛れて一緒に隠れている。
さっきまでの威勢はどうした?
…それにしても、そんなに怖いのか?
俺の場合は"別次元を生きる者"でデフォルメされているので、恐れなどなかった。
「あれは、トロールね。聞く話によると、結構厄介なモンスターみたいよ」
サテラがようやく口を開いた。
機嫌は直ったのだろうか?
トロール…確かに普通の状態だったら会いたくないな。
というか、それが2匹もいるのだが、倒せるのか?
まあ、結果は大体想像がつく。
トロールの1匹が近くまで来て、棍棒を振り上げる。
みんなはもうパニックだ。
それぞれスキルや魔法を乱発する。
連携なんてあったものではない。
魔法は大きく外れ、スキルは仲間同士でぶつかって当たらない。
女子は悲鳴を上げ、全体では、既に逃げ出している奴もいる。
俺はというと…何もしていない。
ただ見ているだけだ。元々無理な事は分かっていたからな。
俺はスニークを使って、全員出ていくのを待つ。
次々に逃げ出していく中、最後まで残っていたのは金沢先生だった。
流石、先生の鏡だな。
誰もいない事を確認すると、先生も逃げていった。
まあ、生徒1人置いていっているんだが。
けれど、人数確認の時にいない事に気付かれるだろうか?
後で聞かれたら町まで戻っていた事にしておこう。
…何故俺一人だけ残ったかというと、それは勿論お金の為だ。
このまま魔物に鉱山が占拠されたままでは、鉱石がこの場所で採れなくなり、結果的に武器の値段が上がってしまうのだ。
正直、モンスターを追い払うのにクラスの連中は邪魔だ。
俺はトロールの前に立つ。
「ほう…お前は逃げないのか?良いだろう、かかってこい!」
トロールの腕に力が入る。
ふふ、今回の俺は一味違うぞ?
人は日々成長するのだ。
俺は前回の反省を活かし、他の属性の魔法も覚えてきたのだ!
ちなみに、教えてくれたのは受付のお姉さんだ。
お姉さんによると、初期魔法位だったらその属性をイメージするだけで使えるらしい。
喰らえ!!"火炎砲"!!
俺が魔法を使うと、手のひらからテニスボール程の大きさの火が飛んでいった。
あ、俺の魔力半分な上に他の属性の魔法の威力弱いの忘れてた…
トロールはそのショボい魔法を軽く払い、そのまま俺の腹を棍棒で突く。
完全に油断していて、まともに喰らってしまった。
俺は後ろに吹っ飛び、壁に強くぶつかる。
……痛っってぇええええ!!!!!!!
この世界に来て、初めて喰らった攻撃だった。
というか、今まで棍棒で思いっきり殴られるなんて経験あるはずも無いので、生まれて初めてのダメージだ。
けれど、体は無事みたいだ。骨も折れていない。
痛みの強さからして、ダンプカーで跳ねられる程の威力はあったと思うのだが…
これも神与石の力なのだろうか?
まあ、一撃で死ぬなんてほぼ無理ゲーだからな。それぐらいじゃ無いと困る。
とはいえ、かなりのダメージを負ってしまい動けない。
「サ…サテラ、あいつらを飛ばして何とか倒せないか?」
さあ、サテラ!やっておしまい!!
「嫌よ。だって重そうだもの」
は?そんな事を言っている場合じゃないだろ?
気持ちの問題って…
やはり、まだ朝の事で怒っているのだろうか?
食べ物の恨みって恐ろしい。
「あ、あの~サテラさん?じゃあ照明叩き割るだけで良いんで、やって貰えないでしょうか…」
俺が下手に出るとサテラは少し考える。
そして、ため息混じりに返事をした。
「…仕方ないわね…やってあげるわよ」
そう言うと、小石を浮かして照明を割っていった。
照明は消え、"黒の支配者"が発動する。
「な、何だ!?」
トロール達は何も見えなくなり、テンパっている。
俺は身体能力が上がり、ゆっくりと立ち上がった。
さあ、反撃の時間だ。
俺はお姉さんがついでに、と教えてくれた強化魔法を使う。
この魔法は、自分の能力を倍まで上げられるというもので、
俺の場合は既に何倍にもなっている身体能力を、さらに倍に出来るということだ。
世界がいつもと違って見える。
全ての動きが遅く見えるどころが、相手の行動を予測することもできた。
今なら、何にでも反応できそうだ。
俺は構えて、拳に力を入れる。
そのまま姿勢を低くし、一気に走り出した。
風を切る音が後から聞こえてくる。
トロールの前までくると、腹を拳で突く。
体勢を変え、もう1匹の方に回し蹴りを喰らわせる。
ダダァァン!!!!
2匹とも、凄いスピードで飛び、壁に叩きつけられる。
途中でヤバいと思って力を弱めたのだが、それでもかなりの威力だった。
あれは大丈夫なのだろうか?
両方、倒れたままピクリとも動かない。
俺は不安になり、近くまで行ったが、気絶しているだけみたいだった。
…良かった、死んではいないようだ。
それにしても、かなり疲れたな。
魔法が解けると、体が重かった。
負荷をかけ過ぎたのだろう。
サテラはというと、驚いて動揺している様子。
「な、何が起きたの?静人の魔力が急に上がったと思ったら一瞬で移動して…トロールが同時に飛んでいって…」
「静人…あなた、何者なの?」
サテラが分かりきった事を聞いてくる。
「ただの人見知り。一市民だ」
そう答えると、サテラの表情が柔らかくなる。
「ふふ、確かにそうね。仲間にも置いていかれるし」
放っておいてくれ。
でも、まあとにかく、サテラの機嫌も戻ったようで良かった。
周りを見渡すと、奥に扉が見える。
あの先にトロール達を配下につけた奴がいるのだろうか?
俺は2匹のトロールを"暗黒形"で押して退かし、扉の前に立つ。
そして、警戒しながら扉を開け、俺とサテラは先へ進んでいった。
本当はこの後の展開まで入れる予定でしたが、文字数が丁度良かったので途中で終わらせました。
前の回に比べて一気に短くなりましたが…
元々、このくらいの長さにしようと思って書いていたので自分的には満足です!
それでは、また来週中に投稿予定なのでまた見に来て貰えると嬉しいです!