第四話 異世界リーバルとは何なのか
心のノート(ver.黒歴史)に新たな一ページを刻みこむ代わりに女神フランと無事再会した俺は、初めに出会った時に聞けなかったこの世界について質問する。
「いくつか聞きたいことがあるんだけどいいか?」
「ええ、私に分かることならなんでも答えてあげるわよ」
フランはまるで本物の女神の様な暖かな微笑みを見せる。
こいつは黙ってれば可愛いのにな──とは思うのだが、本物の性格を知ってしまってるだけに俺のカワイ子ちゃんメーターはピクリとも動かない。
おっと、いかんいかん。女神パワーやらなんやらで心を読まれては敵わんからな──
「まず一つ目はこの世界についてだ。今俺は何処にいるんだ?」
そう、今密談をしている俺と女神がいるのは草原のど真ん中なのだ。
ここに来てから町らしき所にも訪れていないため、何一つ分からないのが現状である。
「いい?一回しか言わないからよく聞いておくのよ。」
と女神は前置きをして、俺にこの世界について話し始めた。
まずこの世界リーバルは、大きく分けて2つのエリアに分類されるらしい。
主に人間が住んでいる中央大陸と、それ以外の種族が住んでいる中央大陸の北側に存在する魔大陸。
魔王という存在はいるらしいが、ここ500年以上は中央大陸への進行は無いとのこと。
なんでも今代の魔王は温厚な性格らしく、侵略を是としないそうなのだ。
勿論、こちら側からの侵略行為に対しても"丁重に"お帰り頂いてるらしい。
そして、中央大陸もまた二つに分けられる。
それは、商業神ハルメを祀るハルメ教を国教とするエリアと、金神フラン──目の前の女神──を祀るフラン教を国教とするエリアだ。それぞれハルメニア王国とフランツ王国を中心に、貴族が領地を持っているという形になっている。
ちなみに今俺達はフラン教の総本山フランツ王国から程近い草原にいるとのこと。
この二領域は特段仲が悪いとかそういうわけではなく、小競り合いが発生する程度なのだそう。
昔は大規模な戦争があったそうなのだが、その時に魔大陸からの侵略があったため休戦状態となり、今までそれが続いているのだ。
「──というのがこの世界についての大まかな情勢ね。まあ流石に世界崩壊の危機とかになれば私とハルメが上手くやるから泥舟に乗った気分でいいわよ」
それだと沈むじゃねーか!本当に大丈夫なのか!?
「⋯⋯で、あんたはここにいていいのか?こういう顕現、っての?本当は良くないんじゃないか?」
「ええ、まあ今回はあんたのサポート役として説明するだけしたら戻るから平気よ。ちょっとの間私がいなくてもなんとかなるって」
「そんなに適当なのか、神様の世界ってやつは⋯⋯」
あまりに適当すぎる発言を聞いて俺は肩を落とす。
「──まあいいや、もう一つの質問ってのは、俺の能力についてだ」
「さっき大声で叫んでたやつね?あんなスキルはこの世界には無いわよ」
女神はにやにやしながらそう発言する。
「は?この世界って魔法があるんじゃないのか?」
「ええそうよ。自身のステータスを見る方法もあるの。でもそれはスキルとしてじゃなく冒険者ギルドで契約するときに配付されるのよ」
やはりというべきか──この剣と魔法の世界リーバルにも冒険者ギルドは存在するらしい。
その主な役割としては、雑用から魔大陸から攻め込んでくる敵の撃退まで様々。
ステータス閲覧は、ギルドと契約するときに自身の血液を特殊な金属の板に垂らすことで見られるようになるのだそう。
そのためステータス閲覧の機能を持った魔法は存在しない。
また、魔法の属性は全部で7つある。主元素として火、水、風、土、雷の5属性、上位元素として光と闇の2種類があるらしい。また、光と闇に関しては使い手が殆どいない。
一人一種類扱えたら一級の魔法士であり、異世界からこの世界に紛れ込んでくる俺のような人は主元素一つと上位元素一つを扱える、なんて人も過去存在したらしい。その人は周囲から勇者と呼ばれ今もなおお伽噺等で語り継がれている。
以上が女神からの説明だった。
「それじゃあ早速ギルドに行きましょうか」
「ここからどうやって行くんだ?」
頭に当然の疑問符を浮かべる俺を余所に、彼女は俺の手をとる。
「ちょっと酔うかもね。──ライトスライド──」
その直後、草原から二つの人の気が消えた──