2- 生徒代表の宣誓
・生徒代表は生徒会長
体育館に入るとそこはすでに少なくない生徒が集まっていた。
クラスごとに分かれているのはすぐにわかり、それはいつも通り全校集会でも始まろうとしているかのようにも見えた。
その時の光景から既に三分の二がすでに体育館に集合していることが分かる。
「勝時、気づいてる?」
少し離れたところにいる輝明へ黙って顔を向ける。
「スマホ、圏外だって」
その言葉にすぐに取り出したスマホへ視線を落とす。
その言葉通り圏外を示すアイコンが出ていた。
「ここはどこだよ」
「こっちも聞きたいよ」
そうこうしていると列を捌いている生徒会長の姿が目に留まった。
そこにいるのは凛とした雰囲気を変えないいつも通り大和撫子な生徒会長であった。
「いつも通り右から学年順に二列で並んでください」
周りを見ると先生の姿は見えない。
先生が見ていなくとも変わらずまじめに手間のかかる仕事をしているなと生徒会長へ視線を向けなおす。
「焦らず速やかに整列してください」
後で気が付くのであるが何かしら作業をしているのは生徒会役員と三年のクラスの学級委員だけであった。
それからしばらく時間をかけて全校生徒が体育館に整列することができた。
点呼の結果当時学校にいた、欠席早退をしていない生徒全員がいることが確認できた。
そして同時に皆ある異常に気が付いた。
教師が一人もいないのだ。
異変が起きた当時は昼休み。
学校に教師がいないわけがないのだ。
その以上に気が付いたころにある噂が広がる。
「先生はあの光に包まれたとき透けるように消えて行った」と言うものだ。
それも一人だけではなく何人も。
噂と一緒に騒めきも大きくなる。
徐々に許容できないほどに大きくなっていく。
「静粛にっ!」
声を張り上げたのは副会長であった。
騒めく体育館の中においてなお皆が黙るほどの通る声。
全校生徒の視線は後ろ手に汲みながらも厳格な表情の副会長に集まっていた。
いつの間にか壇上中央にたたずんでいた副会長は視線を舞台袖に向けると壇上中央を空ける。
そして皆の注目を集めると同時に舞台袖から生徒会長が現れた。
その表情は真剣そのもの。凛々しいだけではなく厳しいものであった。
「みなさん静かに聞いてください」
副会長と交代して壇上の中央に立つと、通る声色と声量でそう告げる。
皆予定調和のように静かに聞き入った。
「生徒会長の旭日陽菓です。今わかっていることを皆さんに報告させていただきます」
「何かわかったのか」といった声が一気に広がる。
ざわめきが即座に復活するが、副会長がそれを即座に止める。
「本日登校した生徒全員がいることが確認できました。そして逆に、教師全員がいないことも確認されました」
その言葉に同様の声が広がるが、それは制止されなかった。
「今の私達の置かれた状況については何もわかっていません。どうしてこうなったのか、ここはどこなのか一切不明です」
その言葉に一同が静まり返る。
「そしてどことも連絡を取ることができません。電気はつながっておらず電波も届いていません」
続く言葉は外部から完全に孤立していることを表していた。
「外を見て分かる通り、周りには草原と巨大な森しかありません」
それは皆知っている。体育館に移るためいったん校舎の外へ出て、それを見渡していたのだから。
「だから、再び皆家に帰るために、全校生徒の協力が必要です」
陽菓の言葉と共に生徒会役員全員が壇上に上がる。
副会長の会計と書記であった。
「苦しいこともあるかもしれませんが、みんなで手を取り合えば必ず無事に帰ることができます。私はそれを成し遂げます」
その言葉と共に一礼する生徒会役員。
それは全校生徒の盛大な拍手によって迎え入れられた。
中には指笛を吹いて囃す者もいた。
「何とかなるか」
「なるようになるよね」
勝時と輝明は笑みを浮かべてそう呟いた。
そして同時に胸の高鳴りを勝時は感じていた。
(異常な体験だけど、もしかしたら自分の力を生かせるかもしれない)
社会から断絶した異常な環境に勝時は武者震いする。
何が起きるのかわからないが必ず起きる問題の解決に。
しかしこの学校の生徒総数は一学年約一七〇人の概ね五〇〇人。
容易ではないのだから。
その後生徒会からは非常災害用の備蓄食糧が放出された。
この日の夕食と翌日の朝食分である。
均等に分けられたそれは決して十分とは言えなかったがそれでも物足りないほど少なくはなく全校生徒におおむね支持される結果となった。
寝床としては二クラス合わせて奇数クラスに男子、偶数クラスに女子がまとまって寝ることとなった。
毛布も布団もない制服や体操服を集めての雑魚寝。非常に質素な寝床だったせいかわからないが多くの生徒が夜更かしすることとなってしまった。
そして、勝時と輝明、さらには二人が部長副部長を務めている部活の部員全員が集まり、話し合いが行われたがそれを知る者多くは無かった。
・なぜか異常事態に皆を率いる覚悟を持って立つことができる




