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3月1日の記憶
記憶ほど尊いものはない。
思い出ほど人に干渉するものはない。
だから、ごめんな。
「お前の記憶、貰ってく」
「やっ、やだっ!待って!!」
「俺は、何を犠牲にしたって、手に入れたいものがあるんだ…
何に変えても。」
何よりも大切なんだよ。
「…………ごめん。」
楽しかったよ。お前といるの。
ずっと、留まりたいと思えるくらいには。
でもごめん。
俺にはやらなきゃいけないことがあるから。
立ち止まる暇なんかないんだ。
「ま、って………祈…」
伸ばされた手に未練がないと言えば嘘になるけど、だからと言ってその手はもう、とれないんだ。
ごめんな、伊澄……