第79話 そういえば
「…いきなり聞いて悪かった。」
クルビスさんがすまなそうに言ってくる。
いえいえ、聞かれれば答えますよ。上手く説明出来るかわかりませんが。
私が首をゆるく降るとクルビスさんが苦笑する。
「ハルカはいつもそうだな。こちらが聞きたいことに答えてくれる。」
「それは、お世話になるんですし。それくらいはしますよ。
クルビスさんには聞かれて困ることも無いですし、私が身元の怪しい女だっていうのは変わりませんから。」
そう。そこは変わってないんだよね。
今はクルビスさんとフェラリーデさんが味方してくれてるから無事なだけで、普通だったら拘束されたり尋問されたりしてるだろう。
運が良かった。ホントにそう思う。
こんな風に外に出るのにだって、髪を隠せるようにフード付きの外套を用意してもらえたし。
だから、出来ることで返せるものは返していこうと思ってる。
森の調査についてきたことや情報提供もそのうちの1つだ。
「…ハルカの故郷の話は聞いていたが、ハルカのことは何も知らないと思ってな。」
そうでしたっけ?
…そういや、途中で私がここが異世界だって知ってるって話になって、そのまま今後どうするかって話になったんだった。
(話の流れで聞かれるままに答えてたもんなぁ。私自身のことなんて…名前くらいしか言ってないかも。)
そりゃ怪しいわ。気になりますよねぇ。
でも、わざわざ聞き出そうとはしませんよね。
気を遣われてるなぁ。
もう異世界に来たショックはだいぶ過ぎてるから、話をするくらい大丈夫なんだけど。
クルビスさんって優しいよね。
ホント、紳士だと思う。
「…そういえば、お話ししてませんでした。名前を名乗ったくらいでしたね。」
「気にしないでくれ。ハルカが現状を把握してくれてることがわかっただけで、ずいぶん助かったんだ。」
申し訳なく思いながら話すと、クルビスさんがフォローしてくれた。
現状の把握?…ああ、異世界にいて、私が珍しいってことですか?




