第67話 森の中
ザザザッ
ただ今クルビスさんに抱き上げられて移動中です。
今回は速度がゆっくりめなので、目を開けてられます。
濃い緑の枝がアーチを作っていて、その間から木漏れ日が差し込んでいる。
枝が陽射しを適度に遮ってくれるので、お散歩にちょうどよさそう。
「ハルカ。」
ひゃいっ。耳元でささやかないで下さいってば~っっ。
いったい何ですか?
「今朝からポムの木が落葉している。この時期には考えられないことだ。ハルカが歩いていた時はどれくらいの葉が木から落ちていたか覚えているか?」
クルビスさんが前を見ながら話してくれる。
早速お仕事ですね。
(落葉ねぇ。ちらほらと木から落ちるのは見たなぁ。でも私が突然森にいた時には、すでに地面一面が落ち葉で埋まってたけどなぁ。)
最初に何歩か歩いて、視界いっぱいの緑と枯葉の音で知らない場所にいるってわかったんだよね。あの時、地面に枯葉が敷き詰められているのを確認してるから間違いない。
ってことは、私があそこにいる前から落葉してたんだ。
「木から落ちるのを何度か見ました。ただ、あまり印象に残ってないので、そんなに数は多くないと思います。…あの、地面に落ち葉がたくさんあるのは、この時期普通なんですか?」
憶えてることを伝えて、わからないことを聞いてみる。
山や森に落ち葉って当たり前だと思うんだけど、落ち葉のない季節にきれいなままで残っているものなのかな。
「…いや。もう少し少ない。特にポムの小道は薬の移動に使われるからな。落ち葉が邪魔にならないように端に片付けられているはずだ。」
クルビスさんの視線を追ってみると、確かに端の方が落ち葉が多い。
でも、その落ち葉は少ししんなりしてるっていうか、色が濃くて道の真ん中に落ちているのとは違う感じだった。
(端の方は湿気てる…。道の真ん中のは乾燥してる…。)
一気に落葉したってこと?
でも、なんで?




