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トカゲと散歩  作者: *ファタル*
本編3私に出来ること
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第65話 ひと騒動

 クルビスさんに聞きたいことをまとめていると、前方から喧噪が聞こえてきた。

 さっきのにぎやかな感じじゃなさそう。もめ事かな?



「っ。ハルカ、悪いが少し急ぐ。」



 名前を呼ばれてクルビスさんを見上げると、緊張した雰囲気が伝わってきた。

 急いで頷いて返事をすると、クルビスさんが歩くスピードを速める。



  (ヤバいのかな。人だかりであんまりよく見えないけど、クルビスさんには見えたのかも。)



 少し小走りになりながら、前方の人だかりを見る。

 クルビスさんは大きいから何が起きてるのか見えるのかもしれない。



「何の騒ぎだ。」



 クルビスさんが声をかけると、人だかりが一斉にこっちを向いた。

 わっ。すごい。普通に声かけただけなのに。



「隊長だ。」



「クルビス隊長…。」



「おい、クルビス様が来られたぞっ。道を開けろっ。」



 皆、口ぐちにクルビスさんを見て言い、人だかりが左右に分かれる。

 道を空けてもらうなんて人生初体験なんですけど。



  (うわ~。波が分かれるみたいに人だかりが割れた…。映画みたい。)



 以前見た映画のワンシーンを思い出しつつ、クルビスさんに遅れないようについて行く。

 …私ついて行っていいのかな?



 人だかりの真ん中にたどり着くと、そこには抹茶色のリザードマンと銀色のリザードマンが手と手を組み合って力比べしていた。

 クルビスさんに気付かないのか、こっちを見ることもなく、お互い殺気立っているのがわかる。



「何があったか教えてもらえるか?」



 クルビスさんが傍にいたヒト型の獣人のおじさんに話を聞く。

 私は後ろにいたので、顔を上げ過ぎないようにしつつ、おじさんの髪を観察させてもらった。灰色に青い束と黄色い束が混じっている。どの色も明るめで鮮やかだ。



 (成る程~。普通はこんな風に髪に色が混じるんだぁ。…派手だなぁ。)



 初めて見た『普通』の髪色を見て驚いていると、クルビスさんに手をギュッと握られた。

 あ、顔上げ過ぎてました?ごめんなさい。



「あ、はい。それが、そこの銀色のが緑のにぶつかったらしくて。謝ろうとしたみたいなんですが、相手が殴りかかってきたのでそれで喧嘩に…。今は、こう着状態です。」



「…そうか。ありがとう。」



 おじさんの説明にクルビスさんの機嫌が悪くなったのがわかる。わ~。怖い~。

 思わず身体がすくむ。



 (なんで機嫌悪くなったんだろう。おじさんの話からすると、肩がぶつかって喧嘩になったんだよね?普通の喧嘩じゃないの?)



「…しばらくここにいてくれ。」



 クルビスさんが振り返りながら軽く屈んで小声で話しかけてくる。

 私が頷いて了承を返すと、クルビスさんは手を離して前に進み出た。



「そこまでだ。」



 わっ。声は穏やかなのにクルビスさんの迫力がすごいっ。すごく怒ってるのがわかる。

 こういうのを怒気っていうのかな。空気がピリピリしてる。



 クルビスさんの背中でよく見えないけど、組み合ってた2人もこっちを向いてるみたい。

 怖いだろうな~。背中しか見えてない私がビビってんだもん。真正面から見てるあの2人はもっとだよね。



「2つとも。話は詰め所で聞く。…覚悟はいいな?」



 覚悟って何を覚悟するんだろう…。怖いなぁ。

 ただの喧嘩にしては大げさじゃない?



「隊長っ。」



 声がした方を見ると、クルビスさんと同じ格好をした青いリザードマンが駆け込んできた。

 誰か守備隊を呼んでたのかな。もうクルビスさんが(おさ)めちゃったけど。



「すみません。お手を煩わせました。」



「いや。通りがかったからな。ぶつかって喧嘩になったらしいが、手を使ったようだ。さっきまで手を組み合ってこう着状態だった。」



「っ。バカなことを…。」



 青いリザードマンは今はもう離れた銀色と緑のリザードマンを見てため息をつく。

 私にはわからないけど、普通の喧嘩じゃないみたい。深刻そう。



「この2つを詰め所に連れて行ってくれ。別々にして、監視を付ける。調書も別で取ってくれ。俺はこれから森に行くが、帰ったらそちらに寄る。」



「わかりました。…ほら、来いっ。」



 ガチャッ



 青いリザードマンが返事をして銀と緑のリザードマンたちを連れていく。

 なんか手錠みたいなのをはめられてるみたい。すごくごつい金属の板みたいなのがちらりと見えた。



 リザードマンたちが去ると、人だかりも散っていく。

 クルビスさんも戻ってきた。



「…待たせた。行こうか。」



 さっきまでとは違って、穏やかなクルビスさんだ。

 ホッとして頷き、差し出された手を取る。

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