第63話 注目の的
衝撃の事実に驚いていると、クルビスさんに後ろ手に手を取られた。
え?何?何?
「では、あっしはこれで失礼しやす。」
おじさんのだみ声が聞こえると、クルビスさんがまた歩き始める。お話が終わったんですね。移動再開ですか。
こけないように気を付けつつもクルビスさんから離れないようについて行く。こんな所ではぐれたら絶対迷子になる。
にしても、クルビスさんが隊長さんって知らなかったなぁ。シードさんもフェラリーデさんも普通に話してたし。
あ、でもシードさんは副隊長さんだったんだよね?だからかな?…とすると、もしかしてフェラリーデさんも?
(そうかも。女神さまと話してたとき、フェラリーデさんが指示出してたもんね。上司と部下って感じで。じゃあ、フェラリーデさんも隊長か副隊長くらいの地位にいるってことなのかな。)
たしか、守備隊には3つの部隊があるんだっけ。それで、隊長も副隊長も3人ずついるってクルビスさん言ってたよね。6人もいれば可能性は高いかも。
シードさんもクルビスさんもそのうちの1人かぁ。私の勘だと、たぶんフェラリーデさんもだろうけど、なんかすごい人たちに助けられちゃったなぁ。
さっきのおじさんもそうだけど、街の人たちにもすごく慕われてるみたいだし。
周りの声が聞こえてくるんだよね。
「ねえねえ。あそこっ。ほら守備隊の…。」
「クルビス隊長じゃないっ。様子を見に来てくれたのかしら。」
「そうよそうよ。きっと。こっち向いてくれないかなぁ。」
…女性の声が多いのは気のせいじゃないと思う。
クルビスさんモテるんだなぁ。
「ちょっと、あそこにクルビス様がいるよっ。」
「あら、ほんと。クルビス様だわ。いつもながら見事な黒だねぇ。」
黒が褒め言葉なんだ。
色に関してはホントに心配しなくていいんだな。
「隊長様じきじきの見回りかい?」
「今日は特別さ。さっきも守備隊の方々が動けない年寄りや子供がいないかって聞いて回ってくれてたしよ。」
お店のおじさんたちもクルビスさんを見て話してる。皆、クルビスさんを見ていくなぁ。
それに対して、クルビスさんの方は歩く速度も変えずに人ごみの中を進んで行く。見られることに慣れてるんだな。
「クルビス様だっ。お母さん、クルビス様だよっ。」
「これっ。指差すんじゃないよっ。失礼だろうっ。」
…さっきからちらほらと「クルビス様」って聞こえるんだけど、名前に様付けって普通しないよね?
いくら守備隊が警察みたいな立場で、クルビスさんがそこの隊長さんでもちょっとおかしいと思う。
(クルビスさんってもしかしてすごく身分が高いのかな?それとも、守備隊っていうのがこの街ですごく力があるのかな?)
守備隊がすごいんだったら、隊長さんであるクルビスさんに様付けも納得出来るんだけど…。
私、この世界のことや街のことなんかは聞いたけど、助けてくれたクルビスさんやフェラリーデさんのことは何にも知らないなぁ。
しばらくお世話になるんだし、もう少しコミュニケーションとってもいいよね?
森に着いたらクルビスさんのこと聞いてみようかな。




