第61話 芝生は青緑
カチッキィィ
階段の上に着いて、クルビスさんが足元にしゃがんだと思ったら、壁が音を立てて外側に開く。
開くと言っても、車のバックドアみたいに跳ね上げるっていう方が正しいかも。ここでは外とつながるドアはこういう形なんだな。
クルビスさんがドアを開けながら外に出たのでついて行くと、明るい陽射しと共に青緑色の芝生が目に飛び込んできた。
緑じゃないんだ。いや、緑っちゃ緑なんだけど、青がすごく強いっていうか…また微妙に色彩が違うっていうか…。
目に映る色に違和感を覚えて思わず立ち止まる。
いきなり明るい所に出たから、まぶしくて手で目をかばった。
「ハルカ。下に階段がある。気を付けろ。」
クルビスさんの声が聞こえる。
階段?手の影から見ると、足元には半円状に床があり、そこから数段の階段が続いていた。
ここに来た時も思ったけど、なんでわざわざ入口に階段があるんだろう?
床が高いことに意味があるのかな?
聞きたいけど、外でのおしゃべりはやめておこうってクルビスさんと決めたばかりだもんね。
後で聞こう。憶えてたら。
明るさに目を細めつつも階段を下りる。
芝生にたどり着くと柔らかい踏み心地だった。
(うわ~。柔らかっ。まるで絨毯の上を歩いてるみたい。この上でお昼寝したら気持ちいいだろうなぁ。)
踏み心地がよくて1歩2歩と踏みしめていく。
そのまま入口付近で芝生の感触を楽しんでいると、クルビスさんから声がかかる。
「ハルカ。こっちだ。」
手を差し出されたので、またつかまって芝生の上を歩いて行く。
結構広いなあ。建物の裏にこんなに芝生が広がってるなんてわからないよね。
木で芝生の周囲をぐるりと取り囲んでいるみたい。
なんか公園っぽいかも。
周りを見ながらクルビスさんについて行くと、木の間に入っていく。
木々を抜けると道に出た。来た時と同じ桜貝の色の道だ。
ここからは人目に付く可能性が高いので、フードを目深にかぶった。
ついて行くと、道の両端には伏せた湯呑のような建物が並んでいる。
どの建物も色はアイボリーで入口部分に階段がついている。
ただ、ここに並んでいる建物の入口はみんな木製だった。
ドアノブが付いているから、普通に横に開くタイプのドアだと思う。
来た時に見たお店や今までいた…守備隊の本部だっけ?…のドアはさっきみたいに跳ね上げるタイプだったのに。
何で違うんだろう。
顔が見えるといけないからあんまり上を見れないんだけど、窓らしき部分も木製ぽかった。
…来た道って表通りっぽかったよね。
ここは裏通りみたいだからその差かな?
そんなことを考えながら車1台分しか通れないような道を進んでいく。
しばらく進むと突き当りになり、そこを右に折れた。
その道を進んでいくと、半球状の小さい建物が並ぶようになってきて、半球状の建物はお店みたいだった。
「鍋にどうだい?いいダシが出るよっ。」
「ジンジャーだよっ。寒さにはこれが1番っ。」
威勢のいい声があちこちから聞こえてくる。
人通りが一気に増えてきたかも。もっとよく見たいけど、目線を少し下にしてフードの中を見られないようにする。
何かいい匂いがするなぁ。
お腹は空いてないけど、食欲を刺激される匂いだ。
人ごみで周りが見えないから匂いの元が何処なのかはわからないけど、この通りが活気があるっていうのはわかった。
でも、道が広くなったわけじゃないから、人通りが多くなるとぶつかりそうになる。
なるべくクルビスさんの真後ろになるようについて行こう。そうすればぶつかりにくいよね。
クルビスさんは人ごみの中をすいすい進んで行く。慣れてるんだな。




