第60話 …反省も大事
私が恐る恐る答えると、クルビスさんは大きく目を見開いた後、目を閉じて動かなくなった。
えっと…。私の年齢がそんなにショックだった?
(こっちの27歳って、人間では…5歳半?うわ~。そりゃショックだわ。)
私は立ち直ってきてるけど、クルビスさんはこれからだよねぇ。
さっきから立ち止まったままなんだけど、どうしようかな。
(…よし、もうしばらく待ってもこのままなら、クルビスさんに声をかけて、とりあえず調査に向かうように提案してみよう。)
私がこんな所であんな質問するから止まっちゃったんだよね。反省。
どんなビックリ情報が飛び出すかわからないから、今後は、質問する時は時と場所と場合を考えてからにします。
…クルビスさん固まっちゃってるなぁ。
ごめんなさい。お仕事なのに、余計なこと言って。
何だか時間と共に申し訳ない気持ちが膨れ上がってくる。
だからってわけじゃないんだけど、クルビスさんに近づいて、空いてる方の手で背中をたたく。
ポンッポンッギュッ
え?ギュッ?
なんで私クルビスさんに抱きしめられてんの?
ただ、気持ちはわかりますよって背中をたたいて…あ。
自分のやったことを思い返して、失敗したことを悟る。片手をつないで、空いた手で背中をたたいたら…抱きしめるような形になるよね。
(わーっ。わーっ。私のバカーっ。そんなつもりじゃなかったのに~っ。)
いつも落ち込んだ妹にしてたみたいに、ちょっと背中を軽くたたこうとしただけなのに〜っ。
内心大慌てだけど、失敗しましたって顔に出すのはシャクだから、何でもないフリをする。
にしても、どうしよう。
(そうだっ。ここは、当初の目的どおり元気づけようっ。そんで、そのまま流そうっ。そうしようっ。)
「…落ち着きました?」
上を見上げて聞いてみる。
くっ。この体勢だと、首の角度がキツイ。でも、笑顔。
元はと言えば、私が原因です。
かなりショックでしたけど、こんなことでお仕事の邪魔は出来ません。
「…ああ。」
クルビスさんが私の頭をポンポンッとなでながら答える。
年齢聞いた後じゃ、この扱いに文句言えないなぁ。クルビスさん、絶対成人してるし。そうなると100歳超えてるってことになるし。
「…すみません。すっかり立ち止まっちゃいましたね。早く森に行きましょうか。」
言いながら、クルビスさんから身体を離す。何でもないように。自然に。
クルビスさんも頷いて、また私の手を引いて進みだした。
しばらく進むと、突き当りに階段が見えてきた。
あそこから上に出るのかな。
「あれを上がると地上に出る。そしたら本部の裏手に出て、そこから森の入口の方へ向かうつもりだ。」
この階段を上っていくんですね。で、裏手の道を使うと。
その道なら誰かに会うこともあまりないってフェラリーデさんも言ってたし、森に着くまでフード被っておとなしく俯き加減で歩けば大丈夫だよね。
私がフードを被りなおしていると、クルビスさんが立ち止まってこっちに向き直る。
おや。なんでしょう。
「ハルカ。外に出たら森までおしゃべりは無しにしよう。俺と話していると、どうしても顔や髪が見えるからな。」
そうですね。クルビスさんとは身長差があり過ぎて、話してるとどうしても顔が上向きになっちゃいますし。
それに、しゃべってて変に注目集めても困るし。
「はい。わかりました。」
私が答えると、クルビスさんが目を細めて笑う。私もつられて笑い返す。
何だかすっかりこの表情にも慣れたなぁ。すごく安心する。
さっきのギクシャクした感じも無くなったし、いざ、森の調査へっ。
…先に街を出ないといけないんだっけ。無事に出れますように。




