第59話 共通理解が一番大事
「え…。あの、もう一回言ってもらえますか?」
思わず立ち止まってクルビスさんを見る。
聞き間違いよね…?今、90って言った?
「っ。違ったかっ。すまない。じゃあ、もう個立ちしてるんだな。」
こだち?って何?
あ、これも聞いとかないといけない常識ってやつ?
「あの…。こだちってなんですか?」
音だけ聞いてもわかんないや。
説明プリーズ。
「え…っと…独り立ちって言えばわかるか?1つの個体として立っていく…子供じゃなくなったってことなんだが…。」
クルビスさんが困惑しながら答えてくれる。
やっぱり常識なんだなぁ。だから説明しにくいんだ。
独り立ちならわかります。後の説明も。
こくこく頷きながら理解を示す。
要は、1人前、大人ってことですよね?
つまりは成人ってこと…ん?
(90の後に言い直して成人の話が出るってことは…。)
「あの。クルビスさん。こちらでの成人…えっと、こだち?っていくつでなるんですか?」
恐る恐る尋ねてみる。
クルビスさんも気付いたみたいで、神妙に答えてくれる。
「100だ。」
ひゃ、百ぅ~っっ?
開いた口がふさがらない。今すごく間抜けな顔をしてると思う。
でも、驚きの方が強くてそれどころじゃない。
だって、百っ?百って、日本だとご長寿って言われる年齢ですよっ。それが、成人っ?
(…異世界だ。ほんと。種族が違うって今実感したかも。)
あらためて自分が異世界にいることを痛感した。
今まで普通に話してたけど、姿だけじゃなくて、本当に全然違う生き物なんだなぁ。
いや。向こうからしたら私の方が違う生き物で、珍獣ってことになるんだよね。
ホントに良く保護してもらえたなぁ。それだけ平和ってことなのかな…。
「…ハルカ?ハルカっ。」
ハッとしてクルビスさんを見ると、心配そうに私を覗き込んでいる。
あ、しまった。驚き過ぎて固まってた。
「す、すみません。ビックリしちゃって。」
「…年齢か?」
そうです。そうです。こくこく頷いて同意を示す。
私がこれだけ驚いてたらわかりますよね。
「…寿命がずいぶん違うんですね。」
声が擦れてるのがわかる。顔も強張ってるんだろうな。
人間の20歳がリザードマンの100歳とすると、人間の平均寿命が80歳くらいだから、単純計算で、リザードマンは…400歳!?
…だめだ。違い過ぎて頭が追い付かない。
さっきから足を止めちゃってるし、調査があるから動かなきゃいけないってわかってるんだけど…。
(さっきのクルビスさんとフェラリーデさんもこんな感じだったのかな?)
「…ハルカ。ハルカは今いくつなんだ?」
クルビスさんが強張った声で聞いてくる。
…何でそんなに真剣に聞いてくるんだろう。私のことなんて、持ってる知識以外、気にする必要ないでしょ?
「ハルカ。」
私なんて、今日初めて会ったんだよ?
なのに…何で、そんな泣きそうなの?
「…27です。成人…こだちは20歳。」




