第58話 見た目もけっこう大事
そんなことを話していたら、すぐに反対側の入口にたどり着いた。そこを通り抜けて右奥に進む。
通路を通りながら、左手側にあった階段を指してクルビスさんが説明してくれた。
「これが上の中央の階段に続いている。」
へえ。これが。
じゃあ、シードさんはこれを上っていったんだな。
「逆にここから下に降りると大浴場に出る。」
クルビスさんが今度は下を指しながら説明してくれる。
地下に大浴場があるんですか?
「なんか湿気こもりそう…。」
下を向いて、思わず口に出していた。
いや。地下にお風呂って湿気いっぱいのイメージしか出てこなくて。
「ハハッ。確かにそうだが、ここの大浴場は術式で外につなげてある。空気がこもることはない。」
笑いながらクルビスさんが答えてくれる。
外につながってるって露天風呂みたいってことかな。それとも通気してるだけかな。
どっちにしても、快適なんですね。
鍛錬場が広かったから、大浴場も広いんだろうな~。
「楽しそうなところ悪いんだが…女性は普段医務局の浴室を使う。ハルカもさっき使っただろう?」
あ、あそこですか。
…なんだ。大浴場は使えないんだ。
「定期的に大浴場を住民に開放している。その時に使えばいい。」
テンションが下がってたら、クルビスさんが苦笑しながらフォローしてくれた。
使える時があるんですねっ。
やった。広いお風呂っ。
こっちにいる間に使えるといいな。
ウキウキと喜んでると、クルビスさんに頭をポンポンッと弾むようになでられた。
…やっぱり、かなり年下に見られてるんじゃないかな。
さっきシードさんと話してた時にも感じたんだけど。
(今27なんだけどなぁ。あの様子だと、下手したら20代にすら見られてないかも。)
ヒト族はいないって言ってたし、今まで会ったヒト型は外のお店で見た獣人のお兄さんとエルフのフェラリーデさんくらいだけど、どちらも西洋風の顔立ちだったもんなぁ。
日本人って若く見られるって言うから…。
しかも、私、身長165cmあるんだけど、こっちで見たのは私よりずっと大きい人ばかりだった。
…子供の体格に見られてる可能性はあるよね。あの女神さまは同じくらいだったけど、他もそうとは限らないし。
何より、シードさんとクルビスさんの態度がねぇ。
フェラリーデさんはそんなことなかったから、リザードマンには私が子供に見えるのかも。
…そういや、クルビスさんっていくつなんだろう?
フェラリーデさんはエルフだから見た目通りの年齢じゃないとして。でも、タメ口だったから、あんまり離れていないとか?
それとも、クルビスさんもフェラリーデさんも100歳超えてるとか。
種族が違うし、ファンタジーなお約束から考えると有り得るかも。
「…。ハルカ。聞きたいことがあるなら遠慮なく聞けよ?」
あ。顔に出てました?
…クルビスさんの方を見ながら考え込んでたらわかるか。
「あの、その、クルビスさんって私のこと…何歳くらいだと思っているんですか?」
一瞬クルビスさんから緊張した気配が伝わってくる。
言いにくいこと聞いちゃったかな。
女性の「いくつに見える?」って質問に男性はすごく困るらしいから。
…女性でも聞かれたら困りますけどね。
「…90くらいか?」
…は?




