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トカゲと散歩  作者: *ファタル*
本編3私に出来ること
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第52話 らせん階段は目が回る

「地下まですぐだ。俺が先に行くから、ハルカは後からついて来てくれ。」



 クルビスさんの言葉に頷いて、手を放す。

 ん?クルビスさん何か言いたそう…気のせい?



「いってらっしゃい。気を付けて。」



 フェラリーデさんの言葉に、浮かんでた疑問も掻き消えて、慌ててクルビスさんの後を追う。

 っと、その前に言わなきゃ。



「行ってきます。」



 私の返事にふわりと微笑んでフェラリーデさんが見送ってくれる。

「行ってきます」なんて久しぶりに言ったなぁ。



 なんかこれから普通にお出かけするみたい。

 いや。調査に行くんですけどね。



 でも、何でも前向きにお気楽に考えていこうって思ってるんだよね。

 泣いてても何も始まらないし。



 ホントはもっと怯えるもんだと思う。異世界なんて所に来たんだし。

 でも、クルビスさんもフェラリーデさんも私を気遣ってくれて、命も助けてもらって、味方してくれそうで…。



 こっちの質問にはきちんと答えてくれるし、身の安全の心配までしてもらってるし、お風呂まで借りちゃったし。



 ラノベではありえないくらい恵まれた異世界トリップ。

 そんな恵まれた状況で怯えてたら、すごく心配かけるだろうし、失礼だと思うんだよね。



 だから、どんな状況になっても前向きに顔を上げていようと思う。

 決めたんだ。



「…ハルカ?どうした?」



 ん?クルビスさんがこっちを振り返って見ている。

 何でもないですよ?



 にっこり微笑んでみると、クルビスさんが止まった。

 あれ?



「…本当に何でもないのか?」



 ええと、ホントに何でもないんですけど、それだとクルビスさん納得しなさそうだよね。

 どうしよっかな。っとと、ふらついちゃった。



 下向いてぐるぐる回りながら降りてるからだろうなぁ。

 目が回ったかも。あ、これだ。



「えっと、何だか目が回っちゃって。」



 そう言うと、クルビスさんはフッを笑って私の所まで上がってきた。

 何だろうと思っていると、フワッと身体が浮いたと思ったら、気が付いたら横抱きにされていた。



 (こ、これは、俗にいう『お姫様だっこ』というやつでは…っ。)



 ええっ。何で?恥ずかしいっ。

 いや、誰も見てないけど、いやいや、誰かに知られることもないけど、いやいやいや、そうじゃなくて。



「あの、クルビスさん?私自分で降りれますっ。」



 焦って声が上ずっているけど、そんなことに構っていられませんっ。

 早くこの状況から抜け出さないとっ。



「この階段は慣れないものが使うとハルカのように目を回す。目的地に着く前に具合が悪くなっても困るからな。おとなしく運ばれてろ。」



 ああ、やっぱり目を回す人いるんだ…って違うっ。

 確かに具合が悪くなっても困りますけど、この階段さえ終わればすぐに治りますから。



 だから、おーろーしーてー。

 何、この羞恥プレイ。誰も見てなくても私が恥ずかしいんですっ。



 ジタバタジタバタ



「こら。暴れるな。危ないだろう?」



 だめだ、ビクともしない。

 何?クルビスさんって鉄かなんかで出来てるの?



「ハルカ。」



 うわ。耳元でその声で名前呼ばないでっ。

 腰、腰に来るっ。



「おとなしく、していろ。…いいな?」



 ひいい。わかりましたっ。

 わかりましたから、そのバリトンボイスでささやかないでぇ。



 こくこく頷いて、敗北を認める。

 くそう。絶対面白がられてる。

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