第51話 非常階段?
フェラリーデさんの傍にいくと、壁にぽっかり穴が開いていた。
暗くて見えにくかったけど、階段があるみたい。
私が目を凝らしていると、いきなり明るくなった。
うわっ。目が痛い。
「大丈夫ですか?明かりをつけましたから、目が焼けたのかもしれませんね。」
明かり?ううっ。まぶしくて良く見えない。
ん。でも、手をかざしてるからかな。ちょっとずつ見えてきたかも。
「大丈夫です。慣れてきました。」
返事を返す間に、さらに見えるようになってきた。
鮮明になった視界に映ったのは、階段は階段でもらせん階段だった。
「階段…?」
こんな場所に?
フェラリーデさん棚を開けてたよね?ってことは、隠し扉?
(え。何で来た道戻るんじゃだめなの?大きな階段上ってきたよね?)
フェラリーデさんに会うまでの道のりを思い出しながら疑問が出てくる。
普通に外に出ればいいんじゃないの?被り物もしたし。
「こちらの階段を使って外に出ていただきます。中央の階段は使えませんので。」
私の疑問にフェラリーデさんが答えてくれる。
中央の階段ってくるときに上ってきた階段だよね?使えないの?
「下には今、この気温で体調を崩した住民がかなり来ているでしょう。今降りていくと非常に注目を浴びてしまいますので、こちらの非常口を使うことにしました。」
あぁ。そうか。トカゲさんは寒さに弱いよね。成る程。
真ん中の階段を降りたら、たくさんのリザードマンに見られるのか…。それは勘弁して欲しいわ。
でも、こんな隠し通路みたいなとこ通って外に出るなんて…。非常口って言ってたけど、すぐに出れるのかな。
フェラリーデさんの説明に頷きながらも、次に思い付いた疑問をぶつけてみる。
「ここを降りたらすぐに外に出られるんですか?」
地下道みたいなとこを通るんでしょうか。
あんまり暗くて狭いとこにずっといたくないんだけど。
「1度、地下の鍛錬場まで下りていただいて、そこから敷地の裏に出ていただきます。その道なら、誰かに会うこともあまり無いでしょう。」
へぇ。鍛錬場があるんだ。病院かと思ってたけど、警察署みたいだなぁ。
実家の近くの警察署にも署内に鍛錬する場所があって、地域の子供たちに剣道や柔道を教えてたらしいし。
地下には降りるけど、映画で見たような薄暗い地下道を通るわけじゃないみたい。ちょっと安心。
それに、誰かに会いにくいっていうのも助かる。何者か聞かれても、答えられないし。
(一応、入院患者ってあつかいだけど、患者が外をふらふらしてたらおかしいもんね。)
うん。とにかく人目を避けて、しゃべらないようにしよう。
いざとなったら、クルビスさんの後ろに隠れてお任せすればいいよね。私はうかつにしゃべれないし。




