第50話 怪しい部屋
私が笑ったらアニスさんはさらに目を見開いた。
もしかして、顔が引きつってた?
不安になっていると、今度はアニスさんがふわりと微笑む。
その途端、周りの空気がパッと華やいだ。
(すごい。部屋の中が明るくなったみたい。女神の微笑みってきっとこんな感じだろうなぁ。)
ボーと見惚れていると、クルビスさんがつないだ手を軽く引っ張る。
ごめんなさい。美人に見惚れてました。
「少しここを離れます。お願いしますね。」
「はい。いってらっしゃいませ。」
フェラリーデさんが声をかけると、アニスさんがはきはきと返事をした。
声も可愛いなぁ。もしかして、まだ若いのかな。
アニスさんを横目で見ながら、空いている手で軽く手を振る。
すると彼女はあの輝く微笑みを向けてくれた。
(わー。やっぱり美人スマイルってすごい威力。)
内心はしゃぎつつ、部屋を後にした。
美人さんに微笑まれてテンション上がったのは秘密です。
部屋を出ると、フェラリーデさんが2つ隣のドアに向かった。
クルビスさんも向かうので、手を引かれるままについて行く。
部屋に入ると、さっきまでいた部屋より狭くて暗かった。
両脇に棚が並び、その中にはいくつものビンや箱、それに草のようなものが置かれている。
通り過ぎる時にちらりと見えた箱の中には、ピンクと緑のシマシマのよくわからないものがたくさん入っていた。
他にも、大きなビンの中には干からびたヤモリというかトカゲみたいなものが入っているし、液体につかったひまわりみたいな花もあった。
何に使うんだろう…。怖くて聞けない。
ブルッと身震いをすると、クルビスさんが手をギュッと握ってくれる。
「ここは薬品保管庫だ。怪しいものばかりに見えるが、ちゃんとした薬なんだそうだ。」
怪しいものって…。クルビスさんもそう思ってたんですね。
この部屋って魔女が使ってそうなものばかりなんだよね。子供が見たら泣くだろうなぁ。
「どれも貴重なものばかりなんですけどね。日にさらせないので、こんな暗い部屋なんですよ。」
フェラリーデさんが前を進みながら説明してくれる。
成る程。それでお化け屋敷みたいな感じになってるんだ。直射日光って薬品には良くないもんね。
「さあ。こちらへどうぞ。」
声を聞いて、棚を見るのを中断して前を向く。
すると、フェラリーデさんが棚をドアのように開けて待っていた。




