第49話 出発しましょう
「じゃあ、行くか。」
クルビスさんの呼びかけに頷いて、一緒にドアに向かう。
フェラリーデさんももちろん一緒。
「気を付けて下さいね。クルビスと一緒なら大丈夫だとは思いますが、今は外では話さない方が安全です。」
どこからバレるかわかりませんしね。クルビスさんの傍にいることにします。
頷くと、クルビスさんに頭をなでられました。フードが取れちゃいますよ。
フードを目元まで引っ張ると、手を離してくれました。
代わりに手をつながれます。何故?
「少しうつむき加減でいてくれ。そうすれば髪の色も見えない。」
成る程。顔を上げたら髪の色が見えますもんね。
フードで視野が狭くなるし、はぐれる可能性もあるもんね。だから手をつなぐのか。
「…開けますよ?」
フェラリーデさんの声で慌てて下を向いた。
クルビスさんもフェラリーデさんも長身だから、立って話すときには上を向くことになるんだよね。
カチャ
ドアが開いて、顔を上げ過ぎないようにしながら中の様子を見ると、さっき座ってたイスに誰か座っていた。
私たちが部屋に入ると、立ち上がって胸に手を当てる。
上体は傾けてないけど、これも礼を示すんだよね。敬礼みたいなものかな?
「作業を続けて下さい。アニス。」
アニスさんか。エルフだよね。耳長いし。
名前からすると女性かな。フェラリーデさんもそうだけど、見た目からじゃすぐにはわかんないんだよね。
年齢も若そうだけど、エルフだしなぁ。
美形で賢くて寿命が長いっていうのは、エルフの定番要素だもん。見た目は判断基準にならない。
(知らないエルフだけど、フェラリーデさんのお世話になるなら、このエルフにもお世話になるかも。)
胸に手を当てて、礼を返しておくことにする。
うつむき加減でやってるから、上体を傾けた礼に近い形だけど、失礼にはならないと思う。
「えっ。」
アニスさんが驚いているみたいだけど、何か間違ったかな?
恐る恐るフードの中から見てみると、目を見開いてこちらを見ている美人さんがいました。
私みたいに後ろで一つにまとめてる。前髪も長いのか、一緒に後ろでまとめられているみたいで顔周りがすっきりしてる。
美人だけど、可愛いっていう印象の方が強いかな。
こっちから見える範囲の髪色は黒だけど、黒一色はいないってさっき聞いたから、後ろの方は違う色なんだろうな。
っとと。あんまりマジマジ見ちゃマズいか。
美人さんってつい見ちゃうけど、自重しないと。とりあえず笑っておこう。
日本人の得意技っ。愛想笑いっ。…言うほどのもんじゃないけどさ。




