第45話 本当のお願い
私が袋に衣類を放り込むと、フェラリーデさんがホッとしたような顔をした。
…気にしてたんだ。黒色の話で意識が逸れてたけど、早く入れとけば良かった。
言ってくれて良かったんだけど。…そんなことしないか。
私に無理強いするような感じが一切ないんだよね。ヒト族だってわかっても態度も変えないで。
私が重症患者だったっていうのを除いても、クルビスさんもフェラリーデさんも一貫して私を気遣ってくれてる。いい人達だよね。ヒトじゃないけど。
だから、信じて聞かれたことには答えようって決めたんだよね。自分のことも話そうって。
それは間違いじゃなかったみたい。本当に私に味方してくれるつもりなんじゃないかな。
仮にそうでなかったとしても、私の素性を隠すことは私の安全を得るには必要なことだし、やっぱり協力しといて損はないと思う。
「ありがとうございます。これで、一安心です。…話を戻しますと、ハルカさんは種族も持ち物も服装もすべてこの世界のものではありませんから、それを隠すことを覚えて欲しかったのです。」
そりゃ、異世界のものなんて、珍しいどころじゃないでしょうね。
なんだっけ、こういうのもオーパーツって言うのかな?
「そこに、気温の違いの話がでました。ハルカさんのいらした地域のほうが寒いという話です。」
そうですね。お湯を暖かめに設定して下さった時にそんな話が出ました。
でも、私がお風呂に入るから話を切り上げて下さったんですよね?
「話は1度中断していましたが、先程「同じ気温だった」と聞いてようやく繋がったのです。」
ああ。「同じ気温」ね。
そこまで聞いたら確かに結びつけるのは簡単かも。
「調査のことをお話ししたのは、ここまで自分の状況を把握しているあなたに隠す意味はないからです。」
確かに。異世界って知ってますし、そこから来たことを隠す必要性も理解してるつもりですし。
さらに言えば、聞かれれば何でも答えるつもりですし。隠す意味もないと思ってますし。
「先に着替えていただきましたが、ハルカさんに本当にお願いしたいのは、素性を隠すことと調査への協力です。」
そういや、フェラリーデさん「まず」着替えていただきたいって言ってたっけ。
で、これが本題ってことね。
(素性を隠すことは私が言い出した部分もあるし、身の安全のためにも協力するとして …後は調査への協力かぁ。それって、私、帰れる可能性があるってこと?それとも、ただの異変の調査?)
お風呂でも聞いてみようって決めてたもんね。
望み薄だけど、聞いてみようか。




