第44話 私のせい?
「朝早い時間の気温はそうでした。でも、すぐに暑くなって、上着を脱ぐくらいになりました。」
私が答えると、クルビスさんとフェラリーデさんが目を合わせる。
…何かあった?気温について言っただけだけど。
「…ハルカさん。今朝はこの辺りでは考えられないくらい低い気温でした。」
ええ。だから、最も寒い日なんですよね?信じられませんけど。
それが何か。
「我々はその原因と影響を調べようとしていました。クルビスにポムの小道に調査に行ってもらったのもその一環です。」
ああ。それでクルビスさんに見つけてもらえたんだ。
…ん?異変の調査をしていて、私を見つけた?
「原因は私が来たこと…ですか?」
恐る恐る尋ねる。
でもたぶん、あってると思う。
「これまでの状況と今のお話から考えてそうではないかと…。」
だろうなぁ。偶然にしては重なりすぎだもん。異常気象に異世界から来た女って。
しかも、「もといた場所と気温が同じくらいでした」なんて…つながりを考えない方がおかしいよね。
(意外なのは、こういうことを隠さずに私に話したってことかなぁ。)
だって、私がここに来た時に最初にいた場所のことを知りたがったのだって、調査のためだよね?
そういうのって機密扱いじゃない?私は騒動の中心にいるからいいってこと?
「…どうして、私に話したんですか?今まで、調査についてなんて話に出なかったですよね?…そういうのって、機密なんじゃないんですか?」
責める気はない。そんな重要そうな話、見知らぬ女に話すわけないし。
でも、なんで今?しかも私に話していいの?これは純粋な疑問。
「今まで話さなかったのは、単純に、気温の低下とハルカさんが結びつかなかったからです。クルビスが保護したと聞いて、その時点では外から来た技術者だと思いました。」
まあ、そうだよね。普通はどこからか来た女って認識だよね。
気温とは結びつかないか。
「そのうち、ヒト族だとお聞きして、この世界には存在しない種族ですから異世界からいらしたのだとわかりました。」
うんうん。成る程。
それで?
「ただ、いきなり異世界だと伝えても混乱なさるでしょうし、ハルカさんの容体は危険な状態でしたから、最初はお話して下さる情報だけで状況を判断しようとしていたのです。」
お気遣いありがとうございます。そういや重症患者でした。
ここに来てから気を遣われっぱなしですね。
「ですが、ハルカさんはここが異世界だと知っていて、すでにそれを受け止めておられました。」
ラノベのおかげですけどね。
あと、ミントグリーンの空のおかげ。
「今もそうですが、話していてもあなたは非常に落ち着いています。ですから、ヒト族がいないことをお話ししました。早いうちに、ご自分の特異性を認識して欲しかったのです。」
成る程。存在しない種族ですって言って回るわけにはいかないもんね。
自分がどういう立場なのか知ってるか知らないかで、言動もずいぶん変わってくると思うし。知っててもらえるなら、その方がいいよね。
「すでに着替えていただいていますが、ハルカさんの服装も持ち物もとても珍しく、狙われる危険の高いものばかりでした。…ああ。その袋の中に衣類を入れておいて下さいね。なるべく早く隠したいのです。」
さっきフェラリーデさんが戻って来た時に渡されてた袋を見る。
成る程。人目につかない方が良いって言ったの私だけど、フェラリーデさんもそう思ってたんだ。
とりあえず、先に服を入れよう。
話の続きはそれからかな。




