第43話 億ってたくさん
「億は1万の1万倍なんですけど…。」
私が億について簡単に言うと、クルビスさんとフェラリーデさんはますますポカンとした顔になる。
「1万倍…。」
「1万倍ですか…。」
ええ。1万倍です。…実感わかないだろうなあ。日常で聞くことない数字だもん。
私だって、学校で習ったり、ニュースで聞かなきゃ耳にしない単位だもんなぁ。
しばらく待ってみたけど、クルビスさんもフェラリーデさんも「1万倍」ってつぶやくばかり。
…そんなにショックだった?
(ここって人口少ないのかなぁ。あ、ついでにこの街の人口聞いてみようかな。)
「あの、この街にはどれくらいの数が住んでるんですか?」
この聞き方であってるよね。たぶん。
人口って言葉はヒトありきのものだし、さっきクルビスさんが「数」って聞いてたし。
「っ。あ、この街の住民の数ですか?」
フェラリーデさんが先に我に返ってくれた。お帰りなさい。
そうです。住民の数を聞きたいんです。クルビスさんもそろそろ1万倍のショックから帰ってきて~。
「ルシェモモには、現在、およそ3万5千の住民が住んでいます。観光や視察などの短期滞在者も含めると5万まで増えます。」
3万5千…。少なっ。旅行者含めて5万って…。
桜各市のほうが多いってこと?確か30万以上はあったはず。結構大きい市だもんね。
「そんなに少ないんですか…。」
今度はこっちがポカンとする番です。
予想よりだいぶ少ない。
(うわ~。もういろいろ常識っていうか、ホントに基本的な認識が違うんだなぁ。)
今迄の話から考えても、ルシェモモって技術都市で発展してる街なんだよね?実際、設備整ってたし。
かなり大きい都市だと思ってたんだけど…。
住民の数が3万5千…。
現代日本の感覚からしたら、かなり少ない。これが大都市の基準だとしたら…。
(これは、いちいち確認していかないと誤解を生むかも…。)
高確率で誤解が発生しそう。
確認大事。ホントに。
「これは、何かお話するたびに確認をしておいたほうが良さそうですね。」
フェラリーデさんがしみじみと言う。
同感です。同じこと考えてました。
「ええ。そういえば、さっきもそんな話をしましたね。確か、今日はずいぶん寒い日なんですよね?」
お風呂を案内してもらってる時にそんな話をしましたよね?
頷きながらフェラリーデさんに尋ねると、フェラリーデさんも頷き返してくれる。
「そうでしたね。ハルカさんは今日が寒いと聞いてとても驚いておられました。」
後半はクルビスさんへの説明ですね。
クルビスさんが驚いた顔をしてる。やっぱここでは今日って寒い日なんだなぁ。私は暑いんだけど。
「森の中で歩いていて、かなり暑いと思いました。朝は私のいた街とそんなに変わらなかったんですけど、すぐに気温が上がってしまって…。」
クルビスさんにわかりやすいように、気温をどう感じたのか具体的に話すことにする。
来たばっかりの時はちょうど良かったんだよね。ちょっと歩いたらどんどん暑くなって、コートは早々に脱いだ。
ジャケットも気温が高くなってきたから脱いで、結構、汗もかいたんだよね。
お風呂は助かったなぁ。
「…ハルカさんのいた街と変わらなかったんですか?」
へ?ああ。気温のことですか。
朝はそうでしたよ?




