第35話 異世界って便利
「後は、こちらが身体を洗う液です。顔も髪も洗えますからね。
女性はしばらく髪につけたままにするそうです。何でも、艶が出るとか…。」
私はフェラリーデさんの説明に驚いて、口を開けてぽかんとした。
(1つ3役っ。いや、今の話だとトリートメント効果もあるから4役かぁ…。)
異世界すごいわ。何、その便利液。
ラノベでもそこまでのはなかったなぁ。
私が感心していると、フェラリーデさんが脱衣所の方に出てきて、棚から2色の布を出した。
「入浴にはこちらをお使い下さい。身体はこちらで拭いて下さいね。
色が違うので大丈夫だと思いますが、こちらを水に浸すとかなり水を吸ってしまって重くなります。気を付けて下さい。」
オレンジの布と薄いピンクの布を見せながら教えてくれる。フェラリーデさんの説明だと、オレンジが身体を洗うタオルで、ピンクの布がバスタオルだよね。
大きさがオレンジの布の方が小さいし、何より色が違うから間違えないだろう。…念のため、入る前に確認しよう。
「わかりました。気を付けます。」
私が頷いて受け取ると、フェラリーデさんも頷く。
「では、一通りご説明しましたし、私はこれで。」
フェラリーデさんが出て行こうとする。
お礼を言おうとして、さっきの洗濯機が目に入った。
そういや聞こうと思ってたんだ。
後で使わせてもらえるなら、洗濯物はひとまとめにしとけばいいよね。
「あの、これって洗濯機ですか?」
洗濯機らしき物を指差して、フェラリーデさんに聞く。
「ええ洗濯器です。ハルカさんの世界でもありましたか?」
おおっ。やっぱり洗濯機ですか。
ホント、設備整ってるよね。助かるなぁ。
「同じ物かはわかりませんが、ありました。自動で洗濯から脱水までしてくれる機械です。」
「脱水…?それは絞るということですか?」
えっ。脱水ないのっ?
洗濯機を指差したまま驚いて目を見開くと、横から声がかかった。
「…何やってんだ?」
あ、クルビスさん。
いえ、ちょっと洗濯物について確認を…。
「いえ。ハルカさんに一通り説明を終えたところです。…何かありましたか?」
私が答える前に、フェラリーデさんが先に尋ねる。
確かに、そんなに時間かかってないよね。なんかあったのかな?
私も内心首を傾げながらクルビスさんを見上げると、クルビスさんと目があった。
綺麗な目。黒一色だけど宝石みたい。
「ハルカ。すまないが、着替えたらしばらくこちらの部屋にいてくれ。
リード。キーファが戻ってきた。」
クルビスさんがフェラリーデさんに言う。
(…緊張感?私は会っちゃいけない人が来た?)
首を戻すと見慣れた色が目に入る。クルビスさん、私のコートとジャケット持ってきてる。
私のことを隠したいんだ。
了解しました。空気を読んで大人しくしときます。
口に手を当て、声には出さずに頷くことで了承を返す。
「…大丈夫だ。こちらの音は隣には聞こえない。ゆっくり入るといい。」
目を細めてクルビスさんが私に説明してくれる。
あ。今、笑いましたね?わかりますよ。
ムッとして視線を合わせると、クルビスさんに頭を撫でられました。悪かったって言われてるみたい。
むう。しょうがないですね。
ふと、フェラリーデさんの方を見ると、何故か呆れたような顔をしてました。
何で?




