第28話 認識の違い
「違うのか?」
クルビスさんが問い返してくる。
いやいやいや。今の話でどうしてそうなるんですか。
ちょっと聞きかじった知識を、聞かれたから、なるべくわかりやすいように説明しただけですよ?
「違います。
私の知識は一般に公開されているものです。」
「「公開!?」」
クルビスさんとフェラリーデさんが同時に驚く。
…そんなに変なこと言ったかな?
「ええ。以前、沖縄に行ったとき、工房を見学したことがあるだけです。」
私が内心首を傾げていると、クルビスさんが教えてくれる。
「…技術は財産だ。特にこのルシェモモでは。
だから、今ハルカが言った内容は、その技術に精通しているか技術者に知り合いがいなければ知りようがないものだ。一般に公開されているなど、ありえない。」
あー。なるほどね。確かに特産品ってお金になるし、情報も規制される。
たとえ聞かれても、支障ない部分だけを教えるんだろうなあ。
(…工房見学や体験なんて、こっちには無いのかな?)
「そうなんですか。では、こちらには観光向けに染め物体験とかは無いんですか?」
気になるから聞いでみる。
ちょっとしか見てないけど、この街大きそうだったし、綺麗な街だったし、観光客もいるんじゃないかなぁ。
体験があれば、一通りの作業くらいは聞くこともあるよね?
「体験…ですか。そうですね。
小さな布に筆や紐で好きな模様を作り、気に入った色をつける、という催しを行う工房があります。
しかし、参加者が行えるのは模様をつけるまでで、最後の染め付けは技術者が行います。
染め付けは手が汚れますから。」
今度はフェラリーデさんが答えてくれた。
こっちではお土産用の体験なんだ。
特産品をよく知ってもらうための体験じゃないのかぁ。
(じゃあ、工房見学なんてありそうにないよね。
これはマズったかな?
なんて説明しよう…。)
あまりに常識が違うと、良く知り合う前に心に距離が出来ちゃうからなぁ。
理解出来ないものは遠ざけたいものだし。
帰れない可能性の方が高そうだから、当面の生活について相談しなきゃなんないんだけどなあ。
でも、話がそこにいくまでに、まず私が無害だと理解してもらわないと。
(つまずいちゃったかな。
…いやいや、まだいける!)
交渉の席でネガティブ思考は厳禁。
相手に引き腰なのが伝わっちゃうと、まとまるものもまとまらなくなる。
強気が良いわけじゃないけど、歩み寄る姿勢が大事だよね。
「私の世界では…」
「…ハルカさんはこことは違う世界から来たと知っていらっしゃるのですか?」
私が思い直して説明しようとすると、フェラリーデさんが話をさえぎって聞いてきた。
え?異世界トリップですよね?
よく知ってますよ。ラノベで。




