第23話 お米は最高!
「さあ、冷めないうちにどうぞ。それは、リギを用いた料理で、リギヤと言います。お口に合うと良いのですが。」
今の私には、気遣うフェラリーデさんの言葉も耳に入ってなかった。
何故なら、目の前にあるチャーハンのことで頭がいっぱいだったから。
(お米…だよね?…形は縦長だなぁ。タイ米っぽいかな?ああ、でも米だ。ありがたいっ。)
チャーハンを凝視したまま、手を合わせる。
この幸運を噛み締めながら言った。
「いただきます。」
食べようとしたら、クルビスさんがスプーンを差し出してくれた。
「ありがとうございます。」
お礼を言ってニッコリ笑うと、視線をそらしながら言われた。
「ゆっくり食べろ。無理はするなよ。口に合うかわからんから、果物も用意した。食べられるだけ食べればいい。」
そう言いながら果物の皿を私の方に寄せてくる。
…そっか、味付けが私の口に合うかわかんないから、果物まで用意してくれたんだ。やっぱり紳士だなぁ。
「はい。」
微笑んでから返事をして、チャーハンにスプーンを入れた。
綺麗な白いドームに、赤や黄色、緑の野菜がキラキラしてて、食欲をそそる。
大きめのスプーンだったので、半分くらいの量をすくって口に入れた。
(…んっ。口の中でパラってほどける。色んな味がするなぁ。野菜の味がハッキリしてる。でも美味しい〜。)
味付けも濃くなく、素材それぞれの味がしながらもバランスよくまとまっていて、ハッキリ言って美味しかった。
赤や黄色、緑の野菜はパプリカやズッキーニみたいだったし、そら豆みたいな色の塊は、食べたら卵の味だった。
(緑の卵か〜。異世界だなぁ。
多分黄身が緑なんだよね?)
私は異世界の料理に興味津々で、スプーンにのせたチャーハンを観察しながら口に入れていった。
とても美味しかったので、よく噛んで味わって食べた。
朝起きてから菓子パンを食べ、後はポムの実を1つ食べただけだったので、まともなご飯はこれが今日初めてだ。
見慣れた料理に似ていたのが良かったのか、私の食い意地が強かったのか、10分ほどでチャーハンを食べ終えた。
まだ、お腹に余裕があったので、フルーツを見る。
(美味しそうだけど、カロリー高そう。
南国フルーツみたいだよね。太るなぁ。)
これ以上食べて良いものか、自分のお腹に意識がいっていると、フェラリーデさんが勧めてくれた。
「まだ食べられるようなら、遠慮せずにどうぞ。魔素はまだ足りていないようですし。…女性が気になさることは、今のハルカさんでは起こりませんから、大丈夫ですよ。」
あ、バレた。
でも、太らないと聞いたら遠慮なく食べれるよね。
じゃあ、早速。
「じゃあ、こちらもいただきます。」
軽く会釈して、フルーツのお皿を引き寄せた。
ひと口サイズにカットされた色とりどりのフルーツが、美しく盛り付けられている。
(フルーツのお花みたい。食べるのもったいないなぁ。
…食べるけど。)
二股の果物用フォークが刺してあったので、それをそのまま口に運んだ。
(甘っ。すっごい甘いっ。
こんなの食べたこと無い。)
口の中いっぱいに広がる甘さに、思わず頬が緩む。
マンゴーのような食感に、まろやかな甘さがあって、いくらでも食べれそうだ。
(色もマンゴーっぽいし、うん、もうこれマンゴーでいいや。)
勝手に命名しながらも、口にはマンゴーを次々に運んでいく。
途中で、メロンみたいな淡い緑色の果物と、イチゴみたいな赤い果物を食べたが、メロンもどきはメロンより淡白な味だったし、赤い果物は甘酸っぱくて爽やかな香りがした。
(味の薄いメロンだなぁ。
昔食べたことあるような…あ、瓜だ。おばあちゃん家で食べたんだ。懐かしい〜。
こっちの赤いのは…と、ん〜甘酸っぱい〜。でも、さっぱりしてて食べやすい。
なんか知ってる味なんだよな〜。なんだっけかなぁ。)
ゆっくり味わいながら、記憶にあるものを呼び起こそうとする。
人によったら、酸っぱいと言われそうな酸味に、すっきりする香り…なんだっけ?
やっぱり暑い季節だったような…。
(果汁も多くてジュースにしても美味しそう…ん?ジュース?…あ、アセロラだっ!)
頭にひらめいた瞬間、夏によく自動販売機で買ってたアセロラジュースを思い出した。
ジュースと同じくらいってことは、このアセロラもどきはアセロラよりかなり甘いよね。あれ、100%ジュースじゃあなかったし。
「こちらの果物はどれも甘いんですね。
とても美味しいです。」
果物の美味しさに感動しながらしゃべると、フェラリーデさんが微笑み、クルビスさんが目を細めた。
最初は怖かったけど、クルビスさんの目を細めた感じって、すごく優しい気がする。
フェラリーデさんの微笑みは言わずもがなだしね。
(おふたりとも優しいなぁ〜。
こんな不審者によくしてくださって、ホントありがたいわ〜。)
果物を食べながら感謝していると、ひと切れ口に入れた途端、違和感があった。
(ん?なんか急にお腹が膨れてきたような?
…もういいや。)
口の中の果物を飲み込んで、手を合わせる。
「ごちそうさまでした。」
ほとんど食べちゃった。
…太らないらしいし、いいか。




