第22話 お昼はチャーハン
そんなに空いてないと思ったんだけどなぁ。
思わずお腹に手を当ててしまう。
…聞こえたかな?
そっと御二方を見ると、やはりというか、私の方を見ていた。
(う〜わ〜。やっぱ、聞こえてたんだ。でも、もう誤魔化しようがないよね?えい、開き直っちゃえ。)
心に決めて、愛想笑いをする。
日本人の得意技、笑って誤魔化せ!
もちろん、歯は見せずにニッコリしました。
「すみません。少しお腹が空いてしまって。
…あの、そこのポムの実を食べても良いですか?」
テーブルの上に置かれたままのポムの実を指して言うと、クルビスさんが手を離して立ち上がった。
「食事を取ってこよう。腹が減ったならもう大丈夫だろう。」
あ、もう手を繋がなくていいんですね。
「ええ。…そういえば、ハルカさんは辛いものや味の濃いものは大丈夫ですか?」
別に平気だけどなぁ。
そこまで頭に浮かんで、ふと気づいた。
(あ、でも、どれくらいの辛さか聞いた方が良いかも。この辺り暑そうだし。)
インドやタイの料理みたいに、香辛料たくさんだと毎日はキツいし。
職場の同僚と飲みに行った店を思い出しながら聞いた。
「…どれくらい辛いのでしょうか。あまり油を使っていないものだと助かります。」
あっさりめの料理なら、なお助かります。
食べれるだけでありがたいんだけど。
「そうですね…だいたいの料理は香辛料が多いので、ルシェモモに来たばかりの方たちには不評なことが多いです。
ハルカさんも香辛料抜きの方が良いでしょうね。」
フェラリーデさんが説明してくれ、私もその方が良さそうだと思ったので、お願いすることにした。
「では、香辛料抜きでお願いします。」
クルビスさんの方を向いてお願いすると、軽く頷いて部屋を出て行った。
(どんなご飯なんだろう。楽しみだな〜。
ご飯って聞いてから、お腹空き始めたなぁ。
もうちょっとだから〜耐えろ〜私のお腹〜。)
手を当てて自分のお腹に言い聞かせていると、フェラリーデさんが微笑ましそうに見ていた。
うわっ。恥ずかしいっ。
「お腹が空くようになったなら、もう安心ですね。ポム茶も今飲んでいる分までにしておきましょう。」
え?良くなったの?これで?
私が驚いていると、フェラリーデさんが微笑みながら頷いて教えてくれた。
「魔素が補給されてきたので、身体が健全な状態に戻ろうとし始めたんです。今までは魔素が足りず、身体の機能が正しく動いていませんでした。
しかし、お腹が空くということは、魔素が身体に補給されて馴染んできたということですから、後は食事で補給出来るんです。
魔素は1度に取り過ぎてもいけませんから、ポム茶は今飲んでいる分までにして、後は食事で調整しましょう。」
良かった。回復してるんだ。
だから、クルビスさんが手を離したんだ。
もうこれ以上魔素はいらないから。
ホッとしながらも、ちょっと残念に思っていると、クルビスさんが戻ってきた。
器用に片手にお皿を2つ持っている。
お皿には、1つにはフルーツらしきものが綺麗に盛られていて、もう1つには湯気のたつカラフルな食べ物がドーム状に盛られていた。
(…もしかして、これ…チャーハン?)
私の前に置かれた皿には、美味しそうな匂いを漂わせながら色鮮やかなチャーハンがのっていた。




