第21話 数え方はいろいろ
「ええと。私のいた国では、こういう時間を計る道具がありまして…ずっと動いている針がありますよね?
…それが1つ動くたびに、1秒と数えます。その目盛りは60まであって、一周して60秒で、1分です。
…ちょうど今長い針が動きましたよね?これが分を表します。これも同じく、一周して60分で1時間と数えます。
そして、この1番短い針が時間を表してます。これが二週して、24時間経つと、1日となります。」
腕時計を外して、文字盤を見せながら説明する。
アナログ時計でよかった。針を見せながら説明出来るし。
もう12時18分なんだよね。
時間のわりに、あんまりお腹空かないなぁ。…お茶飲んでるからかな?
「…時間の計り方はこちらと変わりありませんね。単位が違うだけのようです。」
フェラリーデさんが興味深そうに腕時計を覗きこんでいる。クルビスさんもだ。
時間の感覚が同じなのは助かる。
お茶を飲みながら、ホッとした。
1日72時間とかだったらどうしようかと…。
…うちの社長の持論だったなぁ。
「人間、1日72時間やれば出来る!」
意味わかんない。ホント意味わかんない。
最初、何の冗談かと思ったわよ。
そしたら先輩から、社長は某有名人と一緒で、左脳と右脳を交互に休憩させることが出来るって聞いて驚いたなぁ。
それで、社長が自分の経験から、人間やれば出来る、ていう言葉をアレンジして持論にしたとか聞いて、2度驚いたんだっけ。
…ブラックじゃないからね⁉︎
社長も持論と同じく、
「休めるときに休め、たらたら仕事するくらいなら、半日で仕上げてとっとと家に帰れ。」
ってよく言ってたし。
仕事にはメリハリが大事だって。
おかげで、仕事さえこなせれば、休みは取りやすかったんだよね。
週休2日確約されてたし。
バカンスも推奨してたし。…社長が取るから。
まあ、1日72時間ってのは、人の3倍頭を働かせて仕事しろってことだと、後から古株の先輩に教えてもらったんだけどね。
それくらいのつもりじゃなきゃ、移り変わりの激しいこの世界では生き残れないって。
…社長はホントに72時間サイクルで仕事してるらしいけど…。いつ寝てんだろ?
つらつらと、時間関係で思い出さなくていいことまでが頭に浮かびつつも、フェラリーデさんの説明を続けて聞く。
「こちらでは、先程の…1分が1針、1時間が1刻ですね。時刻の読み方としては、今だと12刻19針になります。」
「…刻ですか。私の国なら、12時19分ですね。
…数字があるんですかっ?」
確認しながら、気になったことを確かめる。
数字があるなら、文字も読めるかな…。
淡い期待が胸に湧いてくる。
「ええ。文字は種族ごとに違いますが、数字は共通です。
商売に必要ですからね。」
種族ごとに文字があるのか…。どれか読めないかな。
まぁ、とりあえず、数字がわかるだけでもありがたいよね。
あ、10進法か聞いとこ。
「私の国では、数字は0から9までで、10個の数字を組み合わせて使うんですけど、こちらではどうなんでしょうか。」
「こちらでも同じですね。何もない状態が0。後は、1から9まで数えて、10になったら次は11から19まで数えていきます。」
私の疑問にフェラリーデさんが時計の文字盤を示しながら答えてくれる。
そっか。時計見せたから数字が同じだってわかったんだ。
納得してると、お腹が小さく鳴りました。
…お茶だけじゃ無理だったか。




