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トカゲと散歩  作者: *ファタル*
本編1気がつけば異世界
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第1話 気が付けば森の中

 サクサクサクサク



 サクサクサクサクサクサク



 今現在、私は森の中を歩いている。

 なんでこうなったか?



 …なんでだろう。



 怒らないでいただきたい。

 私にもよくわからない。



 いつも通りに起きて、いつも通りに支度し、いつも通りに通勤するために駅に向かって歩いていた。

 近くの公園を突っ切るのが近道なので、遅咲きの桜を楽しみながら公園を抜けようと足を進めたら…。



 …そこは緑豊かな森の中でした(笑)



 笑い事じゃないだろって?

 笑わなきゃやってられんわ。いや、マジで。


 

 瞬きしたら視界一杯の緑色。

 頭も身体もフリーズしましたよ。



 とりあえず、一歩下がってみた。


 サク


 戻らない。もう一歩下がる。


 サク


 葉っぱを踏み締める音だけが響く。



 振り返ってみる。やっぱり一面緑色。

 前を見ても緑色。前を見ても後ろを見ても、一面豊かな緑色。



 …念のため、探してみたが、裂け目みたいなものもなく、ゆがんだ部分も見えない。



 何の変哲も無い景色だ。



 …知ってる景色なら。



 背中に嫌な汗が流れてくる。

 知らない場所にいると実感した途端、鳥の鳴き声や木々のさえずりが耳に入ってきた。



 ゆっくり深呼吸して心を落ち着ける。

 バクバクいってる心臓をなだめながら、なるべく早く頭の中をまとめて、これからのことを決断する。



「よし、とりあえず進もう。」







*******************



 サクサクサクサク


 サクサクサクサクサクサク



 …というわけで冒頭に戻る。



 今も、森の中を前に向かって歩いている。

 木を避けながらなので、まっすぐかはわからない。



 でも、とにかく歩く。



 ここは森の中だ。木も生い茂り、どんな獣がいるかわからない。じっとしてても安全じゃない。

 それなら、とにかくこの状況を変えるために歩いた方がいいと思った。もちろん周りに注意を払うけど。



 ヒールなので落ち葉の下の柔らかい土に足を取られやすいが、気をつけながら一歩一歩慎重に進んで行く。



 靴を脱げばいいじゃないって?そんなの却下だ。

 薄いストッキングに包まれただけの、ほぼ素足の状態でなんか歩くもんか。

 


 幸い、今日のヒールは就活時代から使っているもので、営業で1日歩いても靴擦れしない大事な相棒だ。



 最初はおっかなびっくりだったのが、少しずつ慣れてきて、ゆっくりした速度なら歩けるようになってきた。

 踵のヒール部分に体重をかけ過ぎないのがポイントだ。



 家に帰れたとしても、役に立ちそうに無いけど…。



 そして、いつもの癖で歩きながら自分のことを考えていく。

 大まかな行動を決めたら、後のことは移動しながら詰めていくのが私の習慣だ。



 (なんでこうなったか?…わかんないなぁ。最近読んだラノベで、いきなり別の場所に行く話あったけど、あの話みたいに穴に落ちたりしてないしなぁ。いきなりだったもん。瞬きしたら別の場所って…。)



 (場所は?…見たことない植物に、聞いたことない鳥の鳴き声。…日本じゃなさそう。ますますラノベ的展開じゃない?)



 (身体は?…平気みたい。無意識にいつも通り行動しようとしてるし、とりあえず違和感は無いから良しとして、道?みたいなとこだから何とか歩けるし、進めばなんかあるでしょ。)



 (必要なものは?…とりあえず、水はいるなぁ。ペットボトルの水はあるけど、これだけじゃなぁ。)



 つらつらと考えるけど、ここにいる理由はわからない。

 とりあえず水がいることだけは確定してるかな。



 ラノベを引き合いに出してるあたり、現実逃避に聞こえるかもしれないけど、瞬きしたら知らない場所いたんだもんなあ。

 この時点でかなりの異常事態だ。甘い期待は捨ててる。



 しかも、周囲を見ても、最近の街中、いや山の中でも滅多に見ないだろう太い立派な幹の樹木が並んでいて、極めつけに怪しいのが真ん丸の大きな葉っぱだ。

 コンパスで描いたような綺麗な円形の葉っぱ。少なくとも、私はこんな植物は知らない。



 つまり、この時点で日本じゃない、さらには地球じゃない可能性が出て来てるんだよねえ。



 で、頭に浮かんだのが最近読んだラノベ。いわゆる異世界トリップものだ。主人公が突然違う世界へ放り出されてしまうというなんとも迷惑な話だ。



 読み物としては個人的にはとても好きだけど、体験したい訳じゃない。古めかしい表現なら、神隠しって感じかな。迷惑なことに変わりないけど。



 聞ける人もいないから、場所についてはしばらく頭の片隅に置いておく。

 知らない場所なら、水の確保が最優先だ。水は無いと命に関わる。



 こうして、私は水場を求めて歩き続けた。

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