第17話 まだまだ話は続きます
「あの、ポムの小道が私がいた場所の名前なんですよね?…それで立っていられたというのはどういうことでしょう?」
気になることは聞いてみる。これコミュニケーションの基本。
今はとにかく情報が欲しい。
「ええ。あなたがいた場所に丸い葉の木があったでしょう?それがポムの木です。
特殊な香りを放っているため獣が近寄らないという特徴を持っていて、私の故郷と繋ぐ道に植えてあるんです。それがポムの小道です。」
おおっ。あの真ん丸葉っぱの木がポムの木ですか。獣よけの効果まであるなんて、便利ですね〜。
フェラリーデさんの故郷ってことは…。
(エルフっ。エルフの里だっ。ファンタジーの王道だっ。行ってみたいっ。)
ファンタジーな単語に置き換えて内心はしゃいでいると、フェラリーデさんが説明を続けてくれる。
「その香りにはもう一つ特徴がありまして、体内に魔素を留めて消費を抑えるんです。ポムの小道にいたのなら、あれ程危険な状態でもしばらくは持ちます。」
成る程、ファンタジーな植物ですね。
迷い込んだのがあの森の中でよかった。まっすぐ進んだのは正解だった。グッジョブ、自分。
「そうなんですか。運が良かったんですね。朝から歩き通しでしたけど、その…ポムの木のおかげで身体が保てたんですね。」
ホントにヤバかったんだなぁ。再確認しました。
しみじみと自分の幸運を噛み締めていると、
「っ。朝からですかっ。…では、ずいぶん森の深いところにいらっしゃったんですね…。
しかし、おかしいですね。いくらポムの木とはいえ、そこ迄は保たないはずです。ハルカさんのご様子を見る限り、食料をお持ちでは無さそうですし…。」
フェラリーデさんの視線が私のカバンに注がれる。
通勤用にかなり大きめのカバンで、黒いエナメルでピカピカしてる。
森の中を歩き回るためのものじゃないのは一目でわかるし、突っ込んだコートや上着で膨れてる。
服装もスーツにヒールだもんなあ。ますます怪しいよね。
(ああ、そういえば…途中で果物食べたんだっけ。)
森の中でのことを思い返していると、あの黄色い果物とヒヨコもどきのことを思い出した。
カバンの中に幾つかもいだやつを放り込んであるんだった。
「あの、途中で果物を食べたんです。…これなんですけど…。」
ゴソゴソ
詰め込んでいたコートと上着を出して、カバンの中からエコバッグに入れていた果物をバッグごと出す。
「これは…ポムの実ですね。成る程、これを食べたのならば、少量ですが魔素が補給されたはずです。」
フェラリーデさんが納得したように頷く。
これのおかげだったのかあ。お腹空いてただけだったんだけど。
ありがとうヒヨコもどき。君が食べなきゃ私は食べなかった。
「ポムの実があって良かった。ポムの小道には他に実のなる木はありませんから。…なかなか実をつけないんですよ。」
…さっきから聞いてると、もしや奇跡レベルの運の良さだったんですかっ?
うわあ。私、運を使い果たしたかも…。




