第149話 今日はいろいろありました。
にしても、ホントにいろいろあったよねぇ。
仕事行くはずだったのに、気が付いたら森にいるわ、リザードマンに担がれるわ、超絶美形のエルフに会うわ…。
最後にはドラゴンが身元引受人とか。
どんな人生?これ。
うん?そういえば、リザードマンにエルフにドラゴン…。
ラノベというか、ファンタジーの有名どころに結構会ってるなぁ。
その中でもドラゴンっ。
飛んでるところ見ちゃったんだよね。
ってことは、夢がかなったんだ。
ワー、すごーい。
…いえ、別にふざけてるわけじゃあないんですよ?
何だか現実味がなくて。
(でも、全部本当のことだ。これが、現実…。)
今までは、自分の身の安全を確保するために、事態を把握しようと必死だったもんなぁ。
でも、いろいろ決まったし、夜になったし、1人になったし。
…そろそろかな?
(この世界に…1人。私だけ…。)
涙ってさ、全部終わってさ、落ち着いた時に出てくるよね。
さっきまでにぎやかだった部屋がすごく静かだ。涙が手に落ちた音が響くくらい。
ポタ…ポタタッ
1粒出ると、せきを切ったように後から後から涙が出てきた。
「…っく。っっふっ。うっ。」
嗚咽も出てきて、頭の中に「何で?」が渦巻いてる。
何で私なの?何でここに来たの?何で…。
終わりのない「何で?」に答えも出せないまま私は泣き続けた。
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カッカッ
…どれくらいそうしてただろう?
実際にはそう長くはないのかもしれない。
でも、私の感覚としては数時間くらい経ったように感じていた。
そんな状態で、泣き過ぎてしゃっくりが収まらなくて息を整えてる時にあの貝のノックが鳴った。
(誰だろう?もう夜も遅いのに…。)
疑問に思いながらも、しゃっくりを抑えながら答える。
「っっく。ど、どなたでっく、しょう…ッヒック…か?」
「…クルビスだ。茶を持ってきた。入ってもいいか?」
あ、そういえば。メルバさんがフェラリーデさんにお茶を頼んでくれてたんだっけ?
ん?それで何でクルビスさんが持ってきてるの?
いや、別にフェラリーデさんに持ってくるよう指名したわけじゃないけどさ。
あの状況だったら、フェラリーデさんでしょ。普通。
っと、お返事しなきゃ。
ささいな疑問は後々っ。
「は…い。ど、どうっぞ。」
ガチャッ
「…っ。」
入って来たクルビスさんが、私の顔を見て驚いてる。
…酷い顔してるだろうなぁ。幻滅されたかも。




