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トカゲと散歩  作者: *ファタル*
本編4森の中へ
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第147話 私の立場

「そんなっ。メルバさんのせいじゃないです。…方法が無いんですから、仕方ないですよ。」



 私がそう言うと、すまなそうな顔でメルバさんが微笑む。うぐっ。

 さすがエルフ。メルバさんもかなりの美形だから、困った顔で微笑まれると破壊力が半端ない。



 いやでもホントに、メルバさんが肩を落とすことなんてないですし。

 あー兄ちゃんのことがあるからか、メルバさんとても親身になってくれてるんだよね。



 異世界で頼れるものがない身としては、すごくありがたいと思う。

 でも、困ったなあ。この空気、どうしよ。



「メルバ。話は終わったか?良ければ、俺からハルカの今後について話したいんだが?」



 私がおろおろしていると、ルシェリードさんが新しい話題に移ってくれる。

 メルバさんが頷いたのを確認して、ルシェリードさんが私を見て話し始める。



「長くなってはいかんだろうから、簡単に話そう。まず、明日からだが、ハルカにはこの世界について勉強してもらう。最低限の知識が無くては生活できんからな。」



 そりゃそうですよね。

 街の様子をちょっとだけ見たけど、何がどうなってるのか全然わからなかったし。



 出来れば読み書きも教えていただけると助かります。

 私が頷くのを確認しながら、ルシェリードさんが話を続ける。



「むろん文字の読み書きもだ。ルシェモモでは読み書きは必須だからな。

 幾つかの言語があるが、広く使われているものを習得してもらうことになるだろう。講師はリードだ。」



 読み書き教えてもらえるんだ。ラッキー。

 しかも、講師はフェラリーデさん。最初の説明もわかりやすかったし、良い先生になりそう。



「よろしくお願いします。」



「こちらこそ、よろしくお願いします。わからないことがあったら、何でも聞いて下さいね。」



 フェラリーデさんと挨拶をすませると、ルシェリードさんが今度はメルバさんを指した。

 まだあるんですね?



「で、ここでの生活には魔素を扱えることも必須でな。それはメルバが教える。」



「もう、指さないでよ。僕はしばらくこっちにいるからね。ルシンと一緒にやることになるよ。頑張ろうね。」



「はい。よろしくお願いします。」



 ルシン君とか。

 大変そうだけど、楽しくなりそう。



「うん。いいお返事。よろしくお願いします。」



「ここまでが、ハルカがここでやることだ。習得できるまで、しばらくここで過ごしてもらうことになる。その後のことは追々話そう。それで、ハルカの身元なんだが…。」



 表向きの身元ですね。「異世界出身です」って言うわけにいきませんもんね。

 生活するにはハッキリした身元って大事です。



「ハルカは、ここからかなり北にある辺境の村の出身ということになった。

 以前は村があったが、今はもうない。そこの生き残りという設定だ。

 俺の翼で数日飛ばないとたどり着けんような場所だから、村の無い今、誰も知る者はいない。」



 辺境の村の出身か。

 それなら、何かおかしいことをしても、「知らなかった」で通せるかな。



「そこは、海と山に挟まれていてな。メルバから聞いたハルカの故郷の気候と似通っている。

 季節の節目がはっきりしていて、雪が降る。果物だけでなく、海の幸も山の幸もよくとれるから、話していて不自然にはならんだろう。」



 メルバさん情報ってことは、元はあー兄ちゃんだな。

 お話の通りの土地なら、確かに似てる。これならボロが出にくいかも。



「ハルカはそこでたった1つで生活していた。だが、たまたま休暇で飛んでいた俺に見つけられて、ルシェモモに来るように勧められ、そうすることにした。

 しかし、転移の失敗で森の中に出てしまい、クルビスに保護された。

 …これが、ハルカがこっちに来た表向きの理由だ。今ここにいる理由にもなる。」



 しっかり覚えないと。自分のことを忘れましたって言うわけにはいかないもんね。

 メモ帳が欲しいなぁ。筆記用具も。

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