第144話 知りたかったこと
「お邪魔するよ~。結構元気そうだね~。よかったよ~。」
「失礼する。具合はどうだ?魔素酔いは最初が1番キツイからな。」
メルバさんとルシェリードさんが交互に労わってくれる。
弱った時って、こういう労わりの言葉がありがたいよね。社交辞令じゃないのがわかるから、余計にうれしいなぁ。
「大丈夫です。さっき食事もいただきました。美味しかったです。」
「それはよかった。」
「うんうん。しっかり食べれたみたいだね~。もう大丈夫かな。ね?ディーくん?」
「はい。魔素も先程よりさらに安定されてますし、流れが穏やかです。食事での補給も問題なく終わったようですね。もう大丈夫でしょう。」
前半はメルバさんに向かって、後半は私に向かってフェラリーデさんが説明してくれる。
よかった。自分で大丈夫って思ってても、お医者さんに言われると安心するよね。
肩から力が抜けて立てかけていた枕にもたれる。
緊張が一気に抜けた。
目を見るだけとはいえ、告白まがいのことしちゃったから力入ってたんだなぁ。
私の様子を見て、クルビスさんが腰を浮かしたけど、ルシェリードさんに押しとどめられていた。
「大丈夫だ。我が孫よ。気が抜けたのさ。ハルカは魔素酔いは初めてだろう?医者に言われりゃ安心する。」
「はい。力が抜けちゃいました。」
私とルシェリードさんのやり取りにクルビスさんも納得したみたい。
ホッとして見えるのは気のせいじゃないんだろうな。心配ばっかりかけてるかも。
「さて、ちょっと、椅子持ってこようか。話したいことあるし。」
「長。あまり長くは…。」
「うんうん。おっけー。ハルカちゃんも疲れてるもんね。あーちゃんのこととかいろいろ聞きたいこともあるんだけど、とりあえず、これからのことをね。話そうか。」
それまでの高いテンションが一気になりを潜め、静かな穏やかな空気が回りを満たす。
どっちが本当の顔なんだろう。さっきまでの高いテンションも不自然じゃなかったし、謎すぎる。
あー兄ちゃんなら知ってるのかな。
聞けるかわかんないけど。
「単刀直入に言うと、ハルカちゃんは帰れない。…僕たちエルフが帰れなかったように。」
1番にそれがきましたか。
ホントに単刀直入だ。
でも、それくらいでちょうどいい。遠回しなのは好きじゃない。
ある程度予想してたし、それが外れてなかったってだけだ。
…確定したんだ。帰れないって。




