第143話 気付いた気持ち
いろいろ考えた結果、こうなりました。
ご了承ください。
どうしよ。どうしたらいい?目が泳いじゃう。
いや、今なら言い訳が利く。とにかく説明を…。
「嫌われてないなら、いい。」
クルビスさんがポツリと言った言葉が部屋に響く。
嫌われるって…そんなはずないじゃないですかっ。
クルビスさんにちゃんと言おうと目を合わせると、眩しいほどの微笑みに出会った。
目を細めて笑ってるのに、今までと全然違う。
(こんな。こんなの、反則だ。)
目が嬉しいって、幸せだって言ってる。
今までこんな直球の好意を向けられたことあったっけ?
嫌でもわかる。というか、今わかった。
クルビスさん、私のこと好きなんだ。
だから、急にあんなこと聞いてきたんだ。
じゃあ、傍にいようとしてくれるのも?
でも、なんで?今日会ったばかりなのに。
面倒ばかりかけてるのに。
(…言える立場じゃないか。たぶん、私もそうなんだろうなぁ。)
出会ったのが、クルビスさんじゃなければきっと助からなかった。
クルビスさんだから一緒についていったんだ。
(…これはまた、ハードルの高い相手に惚れたなぁ。苦労しそう。)
今の状況で言うことは出来ないけれど、気付いてしまった気持ちにフタは出来ない。
せいぜい、好きなひとの傍にいれるって状況を満喫しよう。
そこまで決めて、クルビスさんにきちんと向き直る。
言えないけれど、大好きですよ。
にっこり微笑むと、クルビスさんが目を見開いて驚いた顔をした。
それから探るような、確かめるような目で私を見る。
おや。疑ってますね?
魔素を見たらウソついてるかわかるんでしょ?メルバさんに教わったんだから。
クルビスさんはまた目を見開いて、それから肩から力を抜いてため息をついた。
緊張が解けたのかな?わかってもらえました?
「…まだ、無理なんだな?」
「…私の立場は明確になってませんし、元の世界に帰る方法があるのかさえ聞いてませんから。」
いろいろあったけど、フェラリーデさん交えてここで話してた時から何か事態が進展したわけじゃないんだよね。
ここに帰ってきて、決めてた通りに病室に入ってるし、しばらく大人しくしとくのも変わりないみたいだし。
「…わかった。じゃあ、決まったら口説くことにする。」
クルビスさんが悪そうな笑みを浮かべる。
トカゲの顔でそれやったら凶悪なんですけど。
一方的に宣言されて、なんと返したものか困っていると、クルビスさんがドアの方を見る。
何かありますか?
カッカッ
この音、ノックだ。クルビスさんには誰かの足音でも聞こえてたのかな?
何はともあれ、お返事しなくては。
「はい。どなたですか?」
「フェラリーデです。入室してもよろしいですか?」
フェラリーデさんだ。
様子を見に来てくれたのかな?
「どうぞ。」
私が返事をすると静かにドアが開いた。
入って来たのはフェラリーデさんだけでなく、メルバさんにルシェリードさんまでいた。




