表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
トカゲと散歩  作者: *ファタル*
本編4森の中へ
155/168

第138話 神隠しの街

ほとんど回想です。

夏ですので、怪談調でどうぞ( ̄▽ ̄)

あ、怖い雰囲気が苦手な方は飛ばしてください。

 *******************



 ーー君たち、知ってるかい?この街の『桜隠しの伝説』を。

 …おー。何人か知ってるみたいだね。以外に有名なのかな?



 ああ、佐藤さんは地元かぁ。それじゃ知ってるよね。

 桜各っていうのはあて字でね。昔は違ったんだ。



 桜が隠れるって書いて『桜隠』って言ってたんだ。

 僕が生まれた頃まではその字だったらしいよ。



 だから、僕の母子手帳にはその字で町の名前が書かれていたよ。

 当時はまだ桜隠町という小さい町でね。

 住んでるのも代々続く地元の人ばかりだったよ。



 まぁ、それでね。今でもあるのかな。



 桜がやたらと多い公園があるんだけど、ポツンと間が空いてる場所があってね。

 そこには昔、樹齢何百年という桜の大木があったんだ。



 昔と言っても僕の生まれる10年くらい前の話だけどね。

 それで、当時、ある日いきなり桜が消えたらしいんだ。



 ん?里深さん信じてないね?



 ハハッ。顔に出てるよ。



 ホントだよ。新聞にも載ったから、探したら当時の記事が出てくると思うよ。



 その桜の大木は地元じゃ有名だったらしくて、もちろん大騒ぎになったってさ。



 おや、佐藤さん。ここまでは知らなかったのかな。



 まぁ、古い話だからねぇ。

 僕も親父に教わったんだ。



 当時、その消えた桜のあった場所を見に行ったらしくてね。

 詳しく教えてくれたよ。



 樹齢が長いだけあって、幹の太い、大きな桜の木だったらしくて、消えた場所には、でっかい穴が空いてたってさ。



 しかも、不思議なことに、掘り返した跡が全く無くて、根っこのあった部分が空洞のまま残されていたって言うんだ。



 僕も子供の頃に聞いた話だったから、その時は不思議だなぁって聞いてたんだけどね。



 高校生の時に肝試しすることになってね。

 理由は忘れたけど、その桜が消えた場所に行こうってなって。



 …まぁ、よくやる若気の至りだよね。



 それで、2人一組でロウソク持って行ったんだ。

 何か目印になるものを置いてくるってことになっててね。



 僕は自分の名前を書いた物差しを置いてくることにしたんだ。



 今と違って街灯なんか無いから、当時の夜道はホントに真っ暗でね。

 ロウソクの明かりだけで行く道は怖かったよ。

 月も出てなかったしね。



 ようやく目的地に到着したんだけど、ホントにそこだけぽっかり地面が空いていて、昼間ならいい花見の場所になるなって、一緒に行ってた友達と言いながら、証拠の品を置いたんだ。



 そしたら、その友達がね。何かの穴にハマっちゃって。



 片足だけだったんだけど、助け出して見たら、地面の中に穴が空いてたんだよね。

 それもさ、こう腕を横にしたような穴が。



 僕にはすぐにわかったよ。親父の言ってた根っこのあった場所だって。

 だって、穴は桜の大木があった場所から伸びていたからね。



 友達はモグラの穴だって怒ってたけど、声は震えてた。

 友達にもわかってたんだろうね。

 その穴は大き過ぎたんだよ。



 ーー僕の腕2本分はあったから。






 *******************



 ブルルッ。

 あー。何か寒くなってきた。



 話自体は、桜が消えて、社長が消えた跡を確認した話なんだけど、社長がわざわざ声を低めて語り口調で言うもんだから、すっかり怪談じみてしまったんだよね。



 でも、怖いもの聞きたさというか、社長の話だからというか、ついつい最後までしっかり聞いちゃった。



 しかも、この話にはオマケがあって、後日、地元出身の先輩と飲みに行ったときに、先輩がこっそり教えてくれたんだけどね。



 桜が無くなるのは、昔からたまにあったらしくて、消えるたびに桜をたくさん植えてたんだって。



 たから、『桜隠しの村』って言われてたのが、そのまま地域の名称になったんだって。

 時代が流れて、桜隠町になって人が増えて、今度はたくさん増えた桜のせいで、桜の名所として有名になったんだって。



 そしたら、隠れるって良い字じゃないからって、桜が各所にあるで『桜各』になったって教えてもらった。



 家に帰ってからも怖くて、部屋の電気つけたまま寝たわ。



 後日、調べたら本当に新聞記事があって、『いったい何処へ?消えた桜の謎』って見出しがついてた。

 写真もあって、白黒でわかりにくかったけど、確かに掘り返したようには見えなかった。



 それを思い出しちゃうと今の自分の状況に納得しちゃう。

 今朝通り抜けるはずだった公園の名前も『おうかく公園』だったし。



 何でひらがななのか不思議だったんだけど、こっちの字はまんま『桜隠』だったんじゃないかな。



 まさか、自分が都市伝説体験するとはね。

 別名通りの街になっちゃったなぁ。



 ーー別名、『神隠しの街』って。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=830034175&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ