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トカゲと散歩  作者: *ファタル*
本編4森の中へ
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第136話 しばらく1人

「あの、私、どれくらい寝ていたんでしょうか?」



 気になるのはそこ。

 なんだかすごくよく寝た気がする。



「日が落ちてから2刻くらいですね。夜の9刻を過ぎたところです。まだ日は変わってません。」



 2時間くらいか。

 そんなに寝てなかったな。



「そうですか。私は魔素酔いを起こしたんですよね?それって、今が落ち着いてたら、もう大丈夫ってことなんですか?」



「ええ。お顔の色も良いですし、魔素も安定されてます。初めての魔素酔いにしては、回復が早いように思いますが、それはクルビスと共鳴していたからでしょう。」




 私の疑問にフェラリーデさんが丁寧に答えてくれる。

 そっか。クルビスさんのおかげかぁ。



「そうなんですか。じゃあ、後でクルビスさんにもお礼言わなきゃ。」



「照れてそっぽ向きますよ。」



 フェラリーデさんが笑いながら教えてくれた。

 やっぱり、あの仕草照れてたんだ。



 その後、頭痛が無いか、手足が動くかなど、簡単な質問をされた。それも、なんともなかったからすぐに終わって、しばらく横になってるように言われた。

 でも、私はフェラリーデさんに頷きながらも、頭の中ではクルビスさんのことばかり考えていた。



(助けてもらってばっかり。何にも返せてないなぁ。)



 異世界で最初にあった男性。

 力が強くて、優しくて、頼りがいがある。



 なのに、押しつけがましいところがなくて。紳士的だし。隊長さんだし。

 もしかしたら、王子様的な立場の方かもしれなくて。



 …嫌いになる要素がないよね。

 リザードマンだけど、嫌だと思ったことないし。



 ホントに不思議なことに、嫌悪は最初からなかった。驚いたけどね。

 生き残るのに必死だったともいえるけど、落ち着いてからも変わらなかったしなぁ。



(抱っこされても恥ずかしかったけど、嫌じゃなかったし。)



 もしこのまま帰れなかったら。

 怖いけど、考えないわけにはいかない。



(生活するには、働いて食べていかなきゃいけないんだから。)



 これは我が家の家訓に影響されていると思う。

『働かざる者食うべからず。』



 子供のころから耳にタコが出来るほど聞かされてきた。

 主にあー兄ちゃん、当兄さんにだ。



「いいか。はる。人間生まれてきたら、死ぬまであがくもんだ。生きてりゃ何とかなるもんさ。」



 そんなことを当時小学4年生だった私に真面目な顔して言ってたな。私、別に生きることに悲観してなかったし、いじめられてもいなかったんだけどな。何があったんだろ?

 今でもよくわからない。



 昔から変わった兄ちゃんだったけど、まさか異世界トリップしてたとは。

 まあ、異世界行っても、持ち前の行動力でどうにかしてたんだろうけど。



 あー兄ちゃんに関しては、心配の二文字が浮かんだことないんだよね。

 事故にあって入院したときも、すぐ直るだろうって家族の誰もが思ってて、その通りになったし。



 …私の場合は、心配してくれるのかな。

 あー兄ちゃんの異世界トリップを知らなかったくらいだし、まだ知られてないかな。

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