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トカゲと散歩  作者: *ファタル*
本編4森の中へ
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第133話 ただいまです。

「戻りました。準備が出来たみたいですよ。転移の間へ移って下さい。」



 クルビスさんに用を尋ねる前にシードさんが帰ってきた。

 クルビスさんはというと、もうこっちは見てなくてルシェリードさんと何か話してる。



 …気のせいだったのかな?

 首を傾げていると、隣から小さなため息が聞こえた。



「…やれやれ。」



 フェラリーデさんが困った顔してる。

 美人はどんな顔しても美人だよね。



「…行きましょうか。ヒーリ、立てますか?」



 私が見てるのに気付くと、すぐにいつもの微笑みに戻った。

 うーん。考えが読めないなぁ。フェラリーデさん、頭良さそうだから。



「っと、まだ無理だろう。」



「えっ。あ、ルシェリード様っ。す、すみませ」



「子供が遠慮などするな。連れて行ってやろう。」



 ヒーリ君がよろけたのをルシェリードさんが支える。

 いつの間に。



 と、いうか、さっきから皆さんの反応がすごいんですけど。

 もしかしなくても、ルシェリードさんってかなり偉いのかな?



(この周りが(かしず)く感じ、まるで王様だ。その孫のクルビスさんももしかして…。)



 ますます、接し方には気を付けないと。

 森に入る前に見た市場の女性たちの視線がすごかったもんなぁ。



 下手なことしたら、絶対恨まれる…ブルブル。

 関わらないのは無理だから、せめて適度な距離感を保たなきゃ。



「いえ、それは私がいたしますのでっ。」



「リード。そなたには2つの様子を見守る役目があるであろう?1つを抱えていては務まらんぞ。

 というか、手持無沙汰でな。手伝わせてくれ。…っと、大きくなったものだ。すっかり重くなったな。ヒーリ。」



 目を細めてヒーリ君を見るルシェリードさん。

 子供が好きなんだな。可愛くて仕方ないって顔してる。



 ヒーリ君は何だかもじもじしていた。

 恥ずかしいのかな。えっと、ヒーリ君て70くらいなんだっけ。…感覚おかしくなりそう。



 それで、100歳で成人で今70だから…14・15歳?

 そりゃ恥ずかしいわ。



 でも、ちょっと嬉しそうかな?

 シードさんがかなり驚いてたから、体格は大人と同じくらいみたいだけど、ルシェリードさんは軽々と持ち上げてる。子供扱いされてるのがくすぐったいのかもしれないなぁ。



 微笑ましい気持ちでヒーリ君を見守っていると、手の中でヒヨコもどきが動き出した。

 ふんぞり返った後は、周りを見渡して悦にいってたのに。飽きたのかな?



「プギッ。ピギッ。」



 …。何かを全力でアピールされてるんだけど、何言ってるのか全然わかんない。

 それとも単に、私には異世界補正なんてものは無いからわかんないだけなのかな?



 周りを見渡すと、周りの方々も不思議そうにヒヨコもどきを見ている。

 周りにもわからないみたいだ。どうしよう。



「腹が空いてるんだろう。セパのヒナは良く食べる。食べてない時がないくらいだ。さっき袋から出てから何も食べてないんだろう?」



 あ、そうかもしれません。

 ルシェリードさんのアドバイスに納得して、ヒヨコもどきをポーチに戻す。



 すると、予想があったってたらしく、ヒヨコもどきはごそごそとポーチの中に納まった。

 人騒がせな…まあ、いいか。生まれたてみたいだし。赤ちゃんと一緒ってことだよね。



 袋の口をゆるく閉じると、ルシェリードさんが「では、行くか。」と言い、それを合図に全員で転移の間に移動した。

 私はというと、不謹慎にもワクワクしている。



(転移っ。何てファンタジ-っぽい響きっ。さっきも見たけど、今回の方が規模が大きいよね?転移の間ってことは…ま、魔法陣とかっ。)



 心が浮き立つままに足取りも軽くなる。

 スキップだってしちゃうんだから。

 


(どんな感じなんだろう?転移初体験~。)



 途中、ヒヨコもどきがピギピギ鳴いてたけど、それは聞こえないふりをした。







 *******************



 結論。酔った。



 いえ、確かに魔法陣らしきものが部屋の床一杯に描いてあって、それが光って…。

 そこまでは、私も冷静でしたよ?ラノベ的展開にウキウキしてましたよ。



 でも、術が発動?した瞬間に、ものすごい揺れた気がして、気が付いたら、見慣れた室内にいました。

 でも、私は口に手を当てて、吐き気を堪えるのに必死で、周りなんて見てなかった。



(う。ちょっとでも動いたら、吐きそう…。)



 転移は成功したみたいだけど、私だけが乗り物酔いならぬ、転移酔いをおこしたみたい。

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